日々是書評

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【終活入門エッセイ】父がひとりで死んでいた - 如月サラ

レビュー

勝間和代さんが言及していたので気になって買ってみた。

内容はタイトルの通り。東京で編集者として暮らす筆者が、地元で一人で暮らしていた父の訃報を知り、知人の助けを借りながらも、基本的には孤軍奮闘しながら死後の処理をしていくというもの。

認知症の母の面倒を見たり、父が残した4匹の年老いた猫を引き取ったり、筆者の苦労はとてもよく伝わってきた。

サラッと書いているけど、父が契約していたインターネットのためのルーターを探して業者に返送するとか、地味に大変だと思う。そういうことが連続して、しかも期限を伴って押し寄せてくるので、やっぱり死後の処理って大変だよな…と再認識。

コラムという形で章の間に紹介される実践知識は勉強になった。家族投信、ペットの生涯施設など、初めて知ることがいくつかあった。

ただし全体的に、実務的な面よりも、筆者のエッセイとしての側面が大きい。「50代女性」と聞いて想像する円熟さみたいなものは薄く、正直言うと少し稚拙な雰囲気は感じた。けれど、それがかえってリアルなのかも。両親を想う時、一人の子どもに戻ってしまう、みたいな。

特に終盤では筆者の半生が語られるので、ちょっと面食らってしまう。同じような人生を歩んできた読者にとっては、なおさら本書に引き込まれてしまうとは思うけど。

それでも終活系の本の入門書としては、悪くないではないかと思った。少し、心の準備をさせてもらえる感じ。文章に携わる仕事をしているだけあって読みやすい。タイトル付けも巧すぎる。

あと、この事が起こったのが2020年。出版されたのが2021年ということで、コロナに関する当時の空気感も感じられた。東京から地元に戻ることがあまりにも憚れた当時。この時期に、死後処理をすることが、輪をかけて大変だったことが分かる。