日々是書評

書評初心者ですが、宜しくお願いします ^^

【時代の空気感を切り取る】コロナの時代の僕ら - パオロ・ジョルダーノ

コロナについて書かれたエッセイと言うことで、気になって買ってみた。筆者はイタリア在住のエッセイストと言うことで、その点も気になってはいた。

エッセイを読み始めてまず感じた事は、コロナが始まってまだ2年しか経っていないと言うのにこれが始まった当初のことがすごく懐かしく思えたことだ。 それだけ、このエッセイはコロナ当初の空気感をよく切り取って表現している。

ただ文章全体がエモいのではなく、筆者の趣味として数学があるからか、文章にはどこか理系的というかロジカルな雰囲気を感じた。

印象に残ったのは、人間の視点ではなくウィルスの視点で世界を見てみること。

人間による自然破壊の結果、ウィルスが自然の中から人間の社会へと漏れ出してしまうこと。 世界人口が増えたことで、これまで食べなかったような動物を食べ始めた結果、温存されていたウィルスを人間側に取り込んでしまうこと。

そもそも現在の地球において人間ほど数が多く活発に移動している動物は他にいない。 ウィルスのキャリアとしてはこれほど適した生物は他にいない、という視点もよく理解できた。

それから、あとがきでの筆者の想いも読み応えがある。この世界的な感染症が終わってしまって、世界が全く元通りに戻っていいのか、と言う疑問の投げかけは僕らがよく考えるべきことだと思う。

コロナ初期の世界の空気感を改めて味わえる点、 ウィルスに関して新しい示唆を得られる点など、意義深さを持つエッセイだった。