- 作者: 桐野夏生
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/09/05
- メディア: 文庫
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名門Q女子高に渦巻く女子高生たちの悪意と欺瞞。「ここは嫌らしいほどの階級社会なのよ」。悪魔的な美貌を持つニンフォマニアのユリコ、競争心をむき出しにし、孤立する途中入学組の和恵。ユリコの姉である"わたし"は二人を激しく憎み、陥れようとする。
圧倒的な筆致で現代女性の生を描ききった、桐野文学の金字塔。
レビュー
面白かった。けど、内容の濃さのせいで一気読みすることはできず、少しずつ読み進めていった。
上巻の感想としては、この人達はなんとバランス感覚の欠如した人々だろう!ということ。 主要な登場人物たちは、心のどこかが壊れてしまっているような、そんな印象を受けた。
きっと主人公の家庭も、和恵の家庭も、ジョンソンの家庭も、そして推測になるけどミツルの家族でさえも機能不全家族だったのかもしれない。 だけどその中でも主人公の家庭は別格。「怪物」であるユリコの重力が強すぎて、全体に歪みが生じてしまっているように思えた。(幸か不幸か、自分は凡庸な見た目をしているので)突出した容姿がここまでに周囲の人生に影響を及ぼすのかと驚きながらも、ページを捲る手が止まらなかった。
そして、こんなにも大勢の「極端」な人物が、見事に物語のコントロール下に置かれている。作者の力量に感服。 加えて、場面の描写も見事で、一つ一つのシーンが強く印象に残っている。
ユリコを突き放す雪山のシーン。ミツルと初めて打ち解けるテニスコートでの場面。和恵の父からの容赦ない言葉が浴びせられる、仄暗い廊下。土砂降りの中を走る、ミツルの母の自動車の車中。
重大な会話が為される時、その場面もまた色濃く描かれていて、それが小説としての奥行きをもたらしていると感じた。
ひとまず上巻は読み終えたのだけど、下巻は一体どのような話になるのだろう。上巻だけでもこんなにも濃密で、読み手が消耗するような話だったのに。恐れ半分、期待半分と言ったところ。とにかく、下巻が早く読みたい。
星評価
★★★★★
本日レビューした本
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- 作者: 桐野夏生
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