日々是書評

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【ちょっと切ない家族小説】星々の舟 - 村山由佳

レビュー

面白くて一晩で読み切った

機能不全とも言える家族は、時間の経過とともに表面上は収まるところに収まったかのように見える。けれども実際には、家族の構成員は満たされない想いや未解決の問題を抱えている。そんな各々の視点で描かれる短編集。 ありがちな家族モノの短編集かと思いきや、良い意味で期待を裏切られた。同じ過去を共有する家族のそれぞれのそれぞれに対する見方は、まるで自分が垣間見ているように没入できた。 この小説では、各々が孤独な傷を抱えているんだけど、過去や人生の意味を見出そうと悩みもがく様は共感したし、とても力をもらえたような気がする。そんなポジティブなメッセージがこの小説の根底には流れている。だから、引き込まれるし、読めてしまう。

だけど、凄惨なDVを受けて息子にも出ていかれた母が早死したことが、まるで美談のように語られるのが腑に落ちなかった。短編集の中に母視点の話は無くて、まるで一人だけ聖人化されてしまって、心の内は知る由もなかったんだけども。

作者のあとがきも良かった。幸せについて自由が大切であると作者は語る。そして同時に、孤独と向き合う必要性も説く。もっとこの人の本を読んでみたいと思わされた。

星評価

★★★★☆

本日レビューした本

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星々の舟 Voyage Through Stars (文春文庫)

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