日々是書評

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【娼年その後】逝年 - 石田衣良

レビュー

前作である「娼年」では、女性用の風俗で働き始めた主人公にスポットライトが当たっていた。女性やセックスに対して淡白だった主人公は、仕事を通して多様な欲望の形に出会い、才能を開花させていく。

一方で今作「逝年」はその続編であり、フォーカスは主人公の周辺へと分散していく。 大学の知人は主人公の魅せられた世界を知るために体を売った。新しいボーイはGIDFTMで、家族との衝突と和解が描かれる。そして前作では描かれなかったような新しい悩みや嗜好を持った客達が登場する。

様々な人間模様が描かれつつも、娼婦として、更には人間として成長したリョウを通じて見る世界は、前作よりも深くて優しいものになっている。 そして物語は、主人公をこの世界に導いた御堂静香の死に収斂していく。

石田衣良娼年、及び逝年の中で女性の加齢を全面的に肯定している。御堂静香の最期、そしてリョウとの最後のセックスは、その集大成のようだった。 彼女とのセックスと死別を経て、リョウは大きなバトンを受け取ったのだと思う。文句なしの正統続編だった。

続編の「爽年」が気になりつつも、だけど逝年で完結してしまっているような気もする。

星評価

★★★★☆

本日レビューした本

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逝年 (集英社文庫)

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