日々是書評

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【国内SF小説】魂の駆動体 - 神林長平

レビュー

神林長平さんと言えば、日本を代表するSF作家の一人だと思う。 この方の作品は、これまでに3作ほど読んできた。哲学的な問いかけを含むような作風で、少し難解な部分はある。 久しく読んでいなかったのだけど、書店で見かけたのをきっかけに、本書を購入してみた。

魂の駆動体。かっこいいタイトルではある。 内容は果たして、非常にSF的。人間を仮想世界に送り込むことが可能となった近未来の話。そして人類が滅亡した後の、「翼人」が生きる世界。2つの世界が、過去パート・未来パート・そして過去パートとして交互に描かれる。

タイトルの魂の駆動体とは、ダブルミーニング。 1つは、魂を熱く燃やすもの。過去の人間は車づくりに魂を燃やした。ハイテクノロジーの世界だからこそ、何か手触りのあるものを作ることに価値が生まれる。また、未来世界では翼人が空を飛ぶことを愛している。全身全霊でスピードを感じること。それが魂を熱くさせる、と描写される。 もう1つは、仮想世界で人間を起動させるシステムのこと。こちらの方は少し難解。未来の世界は実は、この仮想世界の中なのではないか、と示唆される。が、答え合わせは難しく、曖昧なまま物語は終わっていく。

総論として面白かった。 SF的なマクロな世界観の中に、魂を熱くさせる人間くささ(翼人くささ?)が散りばめられている。おじさん二人が希少で高価となったリンゴを盗む冒険譚とか、意識が芽生えたアンドロイドが料理に凝るとか、オールドファッションな良い風味を出している。

ただし、車に関するメカニカルな描写が何度か登場する。自分は難解すぎて少し読み飛ばしてしまった。そういう横道に逸れる作風が許せない読者にはオススメできないかもしれない。