日々是書評

書評初心者ですが、宜しくお願いします ^^

【感染症人類滅亡SF】復活の日 - 小松左京

レビュー

2020年、コロナウイルスが世界を席巻した。そこで話題になったのがウイルスの流行を題材とする本作。

脅威の死亡率を持つ謎のウイルスが世界に流行し、人類は存続の危機に瀕する…という内容。

まず第一に、ある種の読みづらさは否めない。古典SFに特有の冗長さは見受けられた。何よりも本題に入るまでが長い。

第二に、パニック映画のような、人々が大混乱に陥る描写は意外と少なかった印象。それよりもむしろ、渦中の人物にスポットライトが当たる。ウイルス研究に携わった科学者や、その辺縁の軍人などが登場する。彼らの葛藤や職務遂行の描写が多かったように思う。

そういう意味では、静かに、しかし着実に人類はその危機に向かっていくという、そんなストーリーラインだった。エキサイティングな読書体験を期待してはいけない。

しかし総じて、悪くなかった。コロナウイルスによる混乱を経験した今、本書のある種、予言的だった。流感の描写はやけにリアルで、没入感を持って読ませた。

驚くべき速度で人が死んでいくので、謎のテンポ感があった。

第一章の最後、ある人物が独白的に「歴史のif」を問いかけるシーンは痛切さを感じさせた。

ラストシーンは「悪意が悪意を洗い流す」と言った終わり方。かなりフィクションだけど、寓話的だしSF的。これはこれで面白かった。

また、特筆すべきは年代設定。本書が書かれたのは1964年。本書の時代設定は50, 60年代だと思われる。当時の日本社会の空気感を面白く読んだ。人々が長寿に対して楽観的なのが印象的だった。長生きすることの負の側面が、社会全体で今ほど認知されていなかったと推測。

総論。SF小説として、あるいは単に小説として、必読かと問われれば答えに窮する。自分はそれなりに面白く読めたけど、受け付けない読者もいるだろうな、という評価になる。

星評価

★★★★☆

今回紹介した本