レビュー
不動産系のお話に興味があったので手に取ってみた。松岡圭祐さんの書籍を読むのはこれが初めて。そうか、あの「ミッキーマウスの憂鬱」の著者なのか。知名度のある作家だと分かり、俄然興味が強まった。
本書の構成は短編集。毎回主人公は違うのだけど、1人の人物が共通して登場する。いわゆる連作短編集というジャンルになるかと思う。
その毎度登場するキャラクターが「瑕疵借り」。つまり瑕疵物件に住み、不動産屋の味方をする人間。
しかし本作が面白いのは、瑕疵借りの真意。彼はその職務(?)にプロ意識を持っている。
瑕疵の真相を探り、不審死の原因まで突き止めてみせる。それはある意味ではダークヒーロー的。王道ではないのだけど、仕事小説的な面白さを感じさせた。
瑕疵借り的な仕事(?)が現実的にあるのかどうか分からないけど、こんな瑕疵借りがいても良いよね。面白いよねと。創作として非常に楽しめた。
惜しむらくは、瑕疵借りが謎の人物のまま終わってしまったこと。連作を通じて少しずつ過去が明らかになっていく、とかならもっと楽しめたかもしれない。やや物足りないような読後感。