日々是書評

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【面壁者スマイル】三体Ⅱ 黒暗森林 上 - 劉慈欣

レビュー

前作のメインキャラクタであった葉文潔がいきなりプロローグで登場。羅輯という男性に「宇宙社会学を研究しなさい」というアドバイスを授ける。まさしくバトンタッチのような始まり方。

その後、羅輯が大いなる思惑に巻き込まれていく…という形で物語が進んでいく。

以下、本作を読みながら書いた感想。

圧倒的に技術力で優位に立つ三体勢力。しかし地球人類には唯一のリードがある。音声コミュニケーションを行う人類は、真意を心のうちに留めることができる。その一点を指して、三体人は「人類が怖い」と認める。

その優位を利用した人類側の戦略が「面壁計画」。4人の人間が「面壁者」として選出され、彼らに打開策が委ねられる。面壁者は孤独の中で、三体勢力に打ち克つ方法を考えることとなる。うーむ、面白い。

面壁者に対して人々が作る「面壁者スマイル」という語感のキャッチーさがまた良い。前作での「再水化」のように、記憶に残るワードもまた三体の特徴かもしれない。

地球の至るところに撒かれた智子(ソフォン)も良い演出する。心のうち以外はすべて三体に筒抜けになってしまう、というのは物語を通じて緊張感をもたせた。

一方で、ETO(地球三体協会)も健在。面壁者を撃破するために破壁人を選出する。

羅輯は面壁者の任務をサボって、贅沢スローライフを送り始める。これには笑った。でも、夢の女性に出会うさまはとてもロマンチック。400年後に宇宙大決戦を控えているからこそ、二人の時間の美しさが際立つ。

破壁者の目的は面壁者の殺害ではなく、心のうちにある戦略を見破ること。タイラーの元にやってきた破壁者は、見事に戦略を看破する。いやー、痺れた。

羅輯の元にやってきた荘顔は、結局仕組まれていた。羅輯の生活はPDCの想定内だった。荘顔と娘は、最終決戦まで冷凍睡眠させられてしまう。これでいよいよ羅輯は本気にならざるを得ない。国連総長に再選したセイの言葉の鋭さと言ったらない。

しかしここに来て、羅輯の特殊性が1つ明かされる。三体世界が彼を恐れていること。三体世界が彼の暗殺を指示したこと。理由は不明であるものの、とにかく彼が特別であることのみが明かされる。うーむ、ますます物語に惹きつけられる。

羅輯の抹殺のために使われたインフルエンザは恐ろしい。特定の遺伝子を持った人間のみが重症化するウイルス。その他の人間は媒介にしかならない。

自分の信念に従う北海がカッコよすぎる。人類の未来のために保守派のキーマンらを冷静に暗殺する。宇宙の真空状態での暗殺シーンは意外にも初めて読んだかもしれない。銃弾が全く減速しないこと、無重量では精度が落ちないこと、粉砕した銃弾は隕石雨と誤解されること。なるほどなぁ。

終盤に向けて、重要人物が次々と冷凍睡眠に入っていく展開も熱い。来る終末決戦に向けて、確実に物語が進んで行く感じ。

総評としては、なるほど、今作も面白かった。前作に比べると中国色が薄れて、王道SF感が強まった印象。早く下巻を読みたい。

星評価

★★★★★

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