レビュー
ブクログで見かけて気になったので購入。
セネカは古代ローマ時代の哲学者。高校世界史で学んだのが懐かしい。
本書は「生の短さについて」「心の平静について」「幸福な生について」の3篇で構成される。それぞれリンクする部分が多く、内容の重複感は否めない。あと、多くのローマ人が引用されるけど知らない人ばかり…w
それでも、案外楽しく読めた自分がいた。文章から感じるセネカの印象は「気の良い、物知りおじいさん」と言った感じw
さすがに読みにくさは否めないけど、そこはむしろ古代ローマの書籍を日本語で読めることに感謝するべきかな。
以下、各エッセイの所感。
表題作の「生の短さについて」。
「人生は浪費すれば短いけど、十分に活用すれば長い」というのは、本当にそのとおりだと思う。
過去を振り返ることは、平静な精神を持ったものの特権、という過去観も面白い。
静謐を生きていない人は、余暇が怖い。だから、酒と欲望に溺れて「時を短くする」。という説明には、どこかドキリとくるものがあった。
宴にうつつを抜かしすぎるローマ人を憂いたり、その悪習はギリシャ人のものだと言ったり、そのヤレヤレ感になんだか愛くるしさを感じてしまったw
次に「心の平静について」。
人生は無から始まり、無に終わる。我々は何も所有しないし、所有されるべきではない。いま持っているものはいつ無くなっても構わない。そんな思考は、あらゆる悩みが吹き飛ぶようでとても良かった
それでも、時たま酒に狂うのも悪くはない、と説くのは遊びがあっていいね。「正気の人間が詩作の門を叩いてもむだ」というプラトンの引用は直球過ぎて笑えた。
孤独のみを推奨せず、社交の時間も大切であると書かれる。「孤独は群衆への嫌悪を、群衆は孤独への倦怠を癒やしてくれる。」というのはバランスが取れていて共感できる。
人生の目標について、難しすぎずなんとか達成できるものが望ましいとあり、現実味があってよい。
最後に「幸福な生について」。
倦怠を遠ざけるために日々の実務に注力することが推奨される。置かれた場所で咲く的な考えは、実があってとても好き。
以下、引用。
ただちに生きよ。(p32)
彼らは、思いも寄らず、ある日突然、老人となる。(p33)
立派に死ぬ術を知らぬ者は拙く生きる(p107)
星評価
★★★☆☆