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【アメトーークで紹介】残像に口紅を - 筒井康隆

残像に口紅を (中公文庫)

残像に口紅を (中公文庫)

「あ」が使えなくなると、「愛」も「あなた」も消えてしまった。世界からひとつ、またひとつと、ことばが消えてゆく。愛するものを失うことは、とても哀しい…。

言語が消滅するなかで、執筆し、飲食し、講演し、交情する小説家を描き、その後の著者自身の断筆状況を予感させる、究極の実験的長篇小説。

レビュー

期待していたほどじゃなかったけど、面白かった。

あらすじの印象から、もっと悲壮感と寂寥感の漂う物語を期待してしまった。 ところが、いざ読んでみると一人の作家がのらりくらりとメタ小説を展開するという。想像していたよりもずっとカジュアルで親しみやすい小説だった。

たしかに凄い。節ごとに文字が消えていき、語彙に制限がかかっていくというのはユニークで挑戦的。作家としてさぞかしやりがいがあったと思う。 一方で読者としては、作者と同じ熱量を持って読書体験を詰むことは難しい。「有るもの」を認識するのは簡単だけど、「無いもの」を意識するのは直感的ではないからだ。

物語の中盤以降、どんな言葉が消失したのか推測するのをもはや諦めてしまった…w

言葉がなくなっていくことをなんとなく察しつつも、まぁいいかで済ませてしまう群衆は皮肉が効いていて良かった。

元々日本語が達者ではない外国人を登場させたり、言葉の消失を気にかけない年配者が登場するのは面白かった。舞台の幅が広がったようで、なかなかやるなと思った。

星評価

★★★★☆

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