レビュー
初の筒井康隆。
主人公のラゴスは、一生分の人生を費やす旅をする。たった230ページなのに、その間には数十年の月日が経ち、とても長い物語を読んだかのような気分。
旅先で出会う人々やその生活の描き方はそれなりに丁寧で、しっかりと紀行小説として成り立っている。そんな中にも、ワープやら読心やら完全記憶やら浮遊やら、超常能力が散りばめられているんだけど、それは人々の生活に自然な形で浸透していて、ファンタジーとSFのなんとも言えない絶妙な塩梅を生み出している。
有能で人当たりの良い主人公が旅をするという意味では、 パウロコエーリョの「アルケミスト」っぽい。 そして地球ではないどこか別の惑星で、少し不思議な能力を持った人々と出会って行くという意味では、ルグィンの「ハイニッシュ・ユニバース」シリーズを思い出した。
ただ、物語のテンポは普通で、登場人物には特段感情移入できず、可もなく不可もなくと言ったマイルドな読後感。 SF的なエッセンスがもっとあれば良かった。
星評価
★★★☆☆
本日レビューした本
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