レビュー
不動産投資のおすすめ本として紹介されていたので読んでみた。
新書という形態は、不動産投資の書籍の中では珍しいタイプ。ハンディなサイズでページ数もそれなり。とても読みやすかった。
しかし内容はライトではなく、読んでいて背筋が寒くなるようだった。筆者の取材力によるところも大きいと思われる。
本書で扱うのは、通帳偽造や二重契約による不正融資の問題。この業界の(一部の)業者が、いかに初心者を食い物にしてきたかが分かる。
それに対して、筆者の推奨は、
- 相場循環の安い時に買う
- 自分の目と足で判断する
- リスクとコストを把握する
- 迷ったら引き返す
- 身の丈に合った金額
なので、投資の姿勢としては至極当たり前。まぁその当たり前の判断が疎かになるほど、業者の手口が巧妙化してる…ということなのかな。あとは2棟目、3棟目で気が緩んだ、とも。
初心者が不動産投資を始める前に、ぜひとも読んでおくべき本だと思った。
引用・抜粋
以下、読みながら書いた引用と抜粋。
第1章 「長期保証」で油断させる
スルガ銀行からお金を借り、シェアハウス投資を行った40代男性の話。
不動産投資の経験者が騙されているのが、手口の巧妙さを物語っている。
不動産投資者リストがあり、リストアップされている人間にシェアハウス投資会社は営業をかけていた。
悪徳業者の家賃保証とは、ぼったくりした大金の一部を返してるだけに過ぎない。
第2章 「今がチャンス」と錯覚させる
アベノミクスの金融緩和は不動産にも及んだ。低金利時代で稼ぎを失った銀行にとって、アパートローンなどの不動産ローンはまだ相対的に金利が高く、儲けになると思われた。
ここ数年で物件価格は上昇してきた。しかし賃料が変わらないのだから、利回りが下がることになる。つまり、同じ物件でも始めるタイミングによって、大きく不利となってしまう。
第3章 「リスク」から目をそらす
初心者を自己資金ゼロで釣るために、他社からの高金利の借り入れをさせたり、二重契約を行う悪徳業者も。
仲介手数料を2~4割取るような悪徳業者も。
3為契約とは、所有権の横流し。仲介業者は一度所有しない。これで元々の売り主からの買取額を隠せる。
第4章 不正には気づかせない
通帳偽造の実情について書かれる。買い手である顧客までグルになっていたケースには驚き。一緒に銀行騙しましょうよ、みたいな。
第5章 「高利回り」と見せかける
第6章 「ウソ」は堂々とつく
節税や還付金を謳う業者は要注意。結局不動産関連の出費の方が多くなることも。
1物件1法人スキームとは、物件ごとにあるいは金融機関ごとに合同会社を設立して融資を引くこと。金融機関からは個人としての他の借り入れが見えづらくなる。ので、多額の借金が可能となる。銀行を欺く行為に変わりはない。
悪徳業者に対して、東京都や国土交通省は行政処分を全く行っていない。
第7章 それでも投資したい人のために
投資はタイミング。安く買うことを意識する。更に、下げ相場ならば買い手有利。じっくりと物件を品定めすることができる。
自分の目と足で見極める コストとリスクを全部洗い出す 迷ったら必ず引き返す 身の丈に合った投資をする