日々是書評

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【衝撃のコロナ対策】スウェーデン 福祉大国の深層 - 近藤浩一

レビュー

ツイッター橘玲さんが紹介していて、気になったので読んでみた。

スウェーデンといえば漠然と良いイメージがあった。働き方は効率的だし、福祉は行き届いているし…みたいな。

しかし本書を読むと、リアルなスウェーデンの実情が分かってくる。仕事に関しては必ずしも早いとは言えず、孤独でお金の無い老人はたくさんいる。

他には、日本以上に本音と建前を使う、など。良くも悪くも親近感を持てるような読後感。

スウェーデンのコロナ対策にギョッとした日本人は多いと思う。かく言う自分もその一人。しかし本書を読むとその土壌というか萌芽はあったんだなと、むしろ納得感さえ覚えてしまう。

引用・抜粋

以下、読みながら書いた引用と抜粋。

1章 日本とこれだけ違う 仕事の効率、考え方やり方

フィーカとはコーヒーブレイク。日本で言うところの仕事終わりの一杯のような、コミュニケーションチャンス。

スウェーデンの仕事は必ずしも早くはない。

スウェーデン人はよく議論はするが長丁場で、結論が曖昧なことがある。

筆者はドイツ在住時代があったが、ドイツ鉄道は遅延で有名。経理ミスにより給与が遅れたり、税金が多く請求されるミスも。

日本と欧米では効率の意味が異なる。LEANで言うところのフローエフィシェンシーが日本式。いかに早く高品質はサービスを顧客に届けられるか。欧米はリソースエフィシェンシー。いかにコストを抑えられるか。

しかし、スウェーデンでは自動車でも携帯でも中国に抜かれている。ここに来て、日本的な効率を取り入れようという向きがある。

スウェーデンは横社会。個人尊重の意識が強く、上意下達のようなことは稀。労働時間は自己申告で、正確なところを把握できてない企業も…。仕事が残っても他国に押しつけることが可能。

失業率は常に日本のそれを上回っている。特に若者と移民の失業率が高い。また、失業対策も上手く行っているとは言い難い。日本のハローワーク職業訓練、失業手当と大差ない。(ただし審査は日本ほど厳しくない)

コストカットの名目でリストラが頻発している。有名所だと、IKEAアストラゼネカスカンジナビア航空など。それでいて、役員たちは高給。結果として、キャリアの個人主義が強まっている。

第2章 本音を言わない国民性 我慢の住宅と暮らし方

不動産事情について。都市部で賃貸物件を探す場合、5〜6ヶ月待つことはザラ。圧倒的に供給過少。なので所有してしまうことが多い。学生でさえ利子さえ返していればいいローンを利用して購入する。そして売却益でさらに良い物件を買う。ただしオークション制なので値上がりが激しい場合も。

政府は住宅供給を絞り、物件価格が釣り上がることで、景気をコントロールしている。人々は住宅ローンを借りるのが普通となり、銀行は多くの利益を得ている。社会主義と資本主義が都合よく使い分けられている。

スウェーデンは日本以上に本音と建前を使い分ける。アイデアに対していいね!と肯定しつつ採用しない、など。外国人から見れば何を考えてるのかわからない状態。社会体制についても従順的。

バイキング、ノーベル賞、エコアピールなど、イメージをいい方向に変えるのが得意。

日照時間が短いので、陽を浴びること自体が一つのアクティビティ。しかし、皮膚ガンはヨーロッパで一番多く、その死亡者は年間の自動車事故の死亡者数よりも多い。

3章 高い医療費、低い医療・福祉サービスの危ない生活

医療を受けるための待ち時間は長い。ホームドクター制度を取っており、総合病院で診てもらってから専門医を紹介されるため。、また医療費は恐ろしく高い。子どもの医療費がタダだから、日本では良いイメージがある。さらに医師の質は低く、職業倫理が低いことも。総合病院で原因が分からないと診断され、専門医を紹介されないという本末転倒も。

スウェーデンは孤独な老人が多い。個人尊重なので最後まで自力で生きるという考えが強いし、民営化された介護の質は必ずしも高くない。さらに、高齢者の自殺は日本よりも多い。さらに体年金貧困老人も多い。

コロナ対策では国による命の選別が行われた。

4章 教育レベルとともに下がる子どものモラル

ストックホルムでは7割の保育士が無資格。

ゆとり教育と個人尊重の結果、子どもたちが先生の言うことを聞かないように。

留学生へのアピールは国策で行われている。ので、留学では悪い面ではなく良い面しか見えず、そのイメージが世界に拡散されている。

5章 世界の金融・経済を牽引する銀行とグローバル企業

マイナス金利、キャッシュレス決済、公的仮想通貨は日本よりも先んじて動いた。

特に大手銀行らが共同作成したスウィッシュという決済アプリの普及率は7~8割。若者の間では95%。

ノルウェーが石油で調子が良かった頃はノルウェークローネの方が魅力的だったため、スウェーデンからノルウェーへ労働力が流出していた。

スウェーデンは観光産業で外貨を稼いでいる。人口あたりに換算すると、日本の5倍稼いでいる。さらにカジノが合法。

イメージに反して軍事産業も強く、武器供給はイランとロシアに次いで世界第三位。

ヴァレンベリ家という一族が政財界に大きな影響力を持つ。証券の40%を保有している。さらに1%の人間が25%の富を持つ格差社会でもある。(インドと同水準)

環境ビジネスがもたらす環境大国の崩壊

エコ産業では誇大広告も多く、偽造品も出回っている。

環境フレンドリーを謳いつつ環境汚染をしている企業への「グリーンウォッシュ賞」がある。

スウェーデンスリーマイル島の事故を受けていち早く脱原発国民投票で可決された。しかしその後方針はコロコロと変わり、未だに原発は稼働している。その理由としては、原子力を空気を汚さない再生エネルギーと捉えているところ、そして電力輸出による利益を得ているところ。の2つ。

環境運動はビジネスの側面があることを理解しておく。

7章 軍事産業が主導する経済と外交

第二次世界大戦後、秘密裏に核開発を行っていた。廃絶に署名したものの、開発余地は残していて、あくまで一時停止のいったところ。

サーブ社は街の大きな雇用主でもある。産学官が連携し、経済と外交に大きな影響を与えている。基幹産業。

武器輸出のガイドラインはあるが、適切に 運用されているかは疑問。むしろ平和を訴えつつ武器輸出で多額の利益を得ている。

8章 移民・難民の流入に歪むメディア

人口は増加してるが、出生率は2を切っている。つまり移民・難民が底上げしている。

移民への反感感情は高まり、差別政党の人気が高まった。

治安は悪化しており、銃にまつわる事件が多い。麻薬売買も行われている。

大手メディアに対して与党社民党の影響力があるので偏向報道が為されている。

9章 謎の一族支配と世界の権力者ネットワーク

ヴァレンべリ家の影響力について。米中の対立の一つが5G。しかし5Gのシェアの9割はファーウェイ、エリクソンノキア、ZTEが占めており、アメリカは北欧に頼るしかなく、これはスウェーデンにとって追い風。さらにエリクソン(というかスウェーデンの産業界)はヴァレンベリ家の財団の傘下にある。

ヴァレンベリ言えば財団を通じて人道主義や環境配慮を行っているが、企業支配への批判をかわす隠れ蓑として機能している。ノーベル賞にも関わっており、研究開発だけではなくビジネスサイドの重要性を理解している。

ヴァレンベリ家はビルダーバーグ会議の常連であるばかりでなく、運営委員側でもある。

最後のは、利子及び金融制度がいかに人々を支配しているかという説明。

今回紹介した本