日々是書評

書評初心者ですが、宜しくお願いします ^^

【銀行目線】現役融資担当者がかたる 最強の不動産投資法 - 河津桜生

レビュー

面白かった。

筆者は20年以上銀行に務めてきた。業務内容は融資担当をメインに、不動産投資部門や不良債権処理なども。個人として不動産投資もしている。所有数なんと86棟。

そんな筆者が語る、昨今の不正融資問題と、これからの不動産投資について。

主に銀行から見た目線が多く、本業の方だけあって、とても学びがある1冊だった。銀行というのはそんなに悪いところではない。大切なパートナーとして良い関係を築いていくべきなんだろうなぁと、フラットな気持ちを持てた。

いわゆる不動産投資の本とは少し毛色が異なる。だからこそ、1冊持っておきたい書籍だと思わされた。

引用・抜粋

以下、読みながら書いた引用と抜粋。

第1章 閉ざされたアパートローン

いわゆるスルガ銀行の不正融資問題とスマートデイズのカボチャの馬車事件について。しかし、銀行だけではこの事件は起きなかった。銀行は性善説で、通帳偽造などに深く疑いを入れない。買いたい投資家と売りたい業者の利害が一致してしまった。ただ、今ほど巧妙ではないだけで、不正については2008年頃からあった。

第2章 こんな手法は役に立たない

不正融資について。ネットバンキングのログイン画面を自前で作成した話は知っていたけど、まさか中古でATMを購入した猛者がいたとは…。

カーテンスキーム、二重売買スキームは通用しなくなってきている。

同時決済スキームは今でも可能。信用情報の登録反映にはラグがある。同時に複数銀行に申し込むことで、銀行同士に同時借入が分からないようにすることが可能。ただし後でバレて心証が悪くなる。

多法人スキームは同時決済スキームよりも人気だが、今はバレる。そして破綻時のダメージが大きい。例えば、地方の高積算物件は、突発的に大きな修繕費が発生することも。10年住んでた一家が退去、など。200万円程度の利益が1発で吹き飛ぶことも。しかし、複数の金融機関が関わっているため、一括弁済や金利の引き上げといった銀行からのペナルティがない場合も。

スルガスキームの被害者でも、(たとえ赤字でも)満室経営を行っていれば2年ほどで銀行から実績ありと認めてもらえるケースも。その場合、2棟目を購入してそちらを黒字化したり売却益を得ることができる。

第3章 スルガショック後の融資テク・初心者向け

融資は確実に厳しくなっている。業者に任せずに自分で金融機関と対応すること、自分で物件情報を把握すること。「投資」という言葉はあまり出さない。事業としてやってると自覚する。

一般のサラリーマンなら、融資額は3000万円と言ったところ。さらに最近は自己資金重視の流れ。1〜3割の頭金を求められることも。一番多いのは2割。

必要とあらば公庫を利用する。融資期間は10年。金利は高くなるが無担保枠というのもある。

信用金庫、信用組合を利用するのも手。スルガショックを引きずっていないし、融資基準が銀行とは異なる。また地域に貢献することが法で決まっているので、「優しい」。ただし、物件が地域内でないとダメなケースも。ちなみに、飛び込まずに大家や不動産屋からの「紹介」だと話がスムーズ。時間があるならその信金の口座をつくり、実績を作っておく手も。

信金との関係づくりにおいて、実績つまり借金を作るのが効果的。信用保証協会による融資制度がオススメ。最寄の信金から申し込める。

金融機関は断りの理由を言わない。なぜ融資が降りないのか聞いてみるか、「また物件を持ってきてもいいですか?」と聞くと「こんな物件なら…」とヒントをくれることも。また、融資基準は時間経過とともに変わるので、1期経ったらまたトライ、も有り。

第4章 スルガショック後の融資テク・中級者向け

まずは3期黒字を目指す。1期目については諸経費がかかるので赤字でも理解してもらえる。2期目で黒字にする。空室と大きすぎる修繕費に注意。

収支改善の方法としてまずは金利交渉。他行への乗り換えを示唆する。ただし嘘は良くない。それでダメなら実際に乗り換え。

第5章 スルガショック後の融資テク・上級者向け

(まだ初心者なので流し読み)

第6章 これからの不動産投資

成功する不動産投資家について。不動産は買った時に勝負が8割決まっていると言われる。安い時に買う。不審な物件は見送る。と言った「待てる」能力は大事。また、安く買うための「交渉力」も大事。

信金は昔からブレずに不動産貸付が多い。一方地銀は金融庁の指導が入るので、少ないパイをうば言い合う形で模索している。

ビレッジハウスはソフトバンク傘下企業の賃貸サービス。強力なライバルとなるので、近隣にビレッジハウスが無いか確認しておく。

1棟目で成功している不動産投資家は稀。そこで経験を積んで、事業として伸ばしていき、それから2棟目以降に乗り出す、くらいの気持ちで。

今回紹介した本