日々是書評

書評初心者ですが、宜しくお願いします ^^

【不動産営業小説】狭小邸宅 − 新庄耕

レビュー

不動産に関するストーリーが読みたくて、試しに手に取ってみた。

帯には「不動産営業、絶賛の共感!」みたいな文言が。これは期待できるかもしれない…。と思い読み進めたものの、途中までの内容はよくあるビジネスサクセス系のストーリーだった。

主人公はちょっとした学歴を持つ、不動産営業担当。しかし、在籍する企業は大手でもなんでもなく、上司が部下を罵倒したり、(文字通り)蹴りを入れるような環境。

まったく物件を売ることができなかった主人公は、別の支店に左遷となる。伝説の営業担当が上司となるが、「お前は売れない」と単刀直入に言われてしまう。

しかし主人公は、全社的に課題となっていた売れ残り物件に注力。1ヶ月以内に売れなければ辞める…!と覚悟を決める。(これ、絶対に売れる流れじゃん)

案の定、物件は売れる。たまたま物件を探していた高属性の夫婦がやってきて、たまたまお節介な友人も一緒についてきて、主人公が、というよりもその友人が買うように後押ししてくれるという…。

そして伝説の上司が助言をしてくれるようになり、主人公はまた物件を売れるようになるという…。

いやぁ、これ系のお話にありがちなストーリーw

不正融資の話とか、不動産バブルの話とか、そういう社会問題やマクロな話が読めたらもっと面白かったな〜と思ってしまった。事前の期待が大きすぎた。

ただ、終わり方は良かった。

大学時代の同窓会にたまたま参加してしまった主人公。大企業のサラリーマンたちの仕事の愚痴大会。「世田谷の家ってどれくらいで買えるの?」という不躾な質問。「お前らみたいなカスは世田谷の1億の家は買えない」と言い放つ主人公。いやぁ、すっかり業界に染まってしまった。

それから、担当している購入希望者は、条件を下げずに予算は上げない。現実を伝えるも、逆上されて罵倒される。

なんとも後味が悪いのだけど、でもそれが良い。さすが、すばる文学賞を受賞しているだけあって面白かった。