日々是書評

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【元祖ニューヨークの女?!】ティファニーで朝食を - トルーマン・カポーティ

レビュー

ティファニーで朝食を。自分の中では「名前は知っているけど読んだことは無い本ランキング」ナンバーワン!w

「人生を狂わす名著50」で紹介されていたので、良い機会だと思って手にとって見た。

【文芸オタクの本紹介】人生を狂わす名著50 - 三宅香帆

いやー、良かったね。映画版でオードリー・ヘップバーンが演じたホリー・ゴライトリーはとっても魅力的。元祖・ニューヨークの女!って感じ?その言動、振る舞い、暮らし方はとにかく都会的。

ホリーに入れ込んだある男性は、彼女を以下のように表す。

「今のあの子はあんたにはどんな人間に見えるかね?睡眠薬をひと瓶空けて人生を閉じ、あんたはそれを新聞記事で知ることになる――まさにそういうタイプの娘なんだ」

八方美人のような見せかけの人気者なんかじゃない。自分の欲望に一切嘘をつかないようなそんな危うい生き様に痺れてしまう。

それにしてもホリー・ゴライトリーが入力候補で出てくるのすごい!w

一方で、主人公は作家志望の男性。真面目で文学青年風。これがまた対比的で良い。真面目くんが一歩引いていることで、ミス・ゴライトリーの奔放な明るさが際立っている。

この作家志望の一人称を村上春樹が訳すというのがまた良いよねw

ホリーが主人公に投げかけたセリフをいくつか引用。

  • 「私は違うな。何にでも慣れたりはしない。そんなのって死んだも同然じゃない」
  • 「ウィスキーとりんごって合うのよ。一杯いただけないかしら、ダーリン」
  • 「要するに『あなたが善きことをしているときにだけ、あなたに善きことが起こるってことなのよ』」
  • 「でもね、腰をすえることのできる場所が、すなわち故郷よ。私はそんな場所を探し続けているのよ」

生の哲学と、自分流の生活を感じさせるセリフに、これまた痺れる。

そしてまた別のシーンより。

「ダーリン」と彼女は僕に言いつけた。「そこの抽斗から化粧バッグを取ってくれない。女たるもの、口紅もつけずにその手の手紙を読むわけにはいかないもの」

悲嘆に暮れてさえ、こんな魅力的な言葉を放ってみせるんだからたまらない。

あと、ピカユーンとかクニーシェとか、まったく聞いたこと無いんだけど、なんだかオシャレそうな物の名前wが当然のように出てきて、それもまた良いスパイスになっていた。

50年代の小説にしては、女性同士の恋愛、つまりビアンについてのフラットな言及があるのも良い。

物語の終わり方にはすこしだけしんみりとしてしまう。

アパートの新しい住人とか、離婚訴訟に発展した旧知の夫婦とか、帰ってきた猫とか。ホリーがいなくなっても世界は回り続けるんだよな、と現実世界に引き戻してくれるような読後感。

そんな中でも、主人公はアフリカの大地を吹き渡る風にホリーの息吹を感じようとして、それってとても昔の映画のようで、終幕まで洒落た小説だった。

海外の古典文学を読んでこんなにうっとりした気分になったのは初めてだった。村上春樹の訳に読みにくさが一切なかった、というのも大きなポイント。この人生で読むことができて良かった。読書家として至福な気分。紹介してくれた名著50に感謝。

星評価

★★★★★

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