日々是書評

書評初心者ですが、宜しくお願いします ^^

【農業エンタメ】農ガール、農ライフ - 垣谷美雨

レビュー

垣谷美雨さんの作品を読むのは何冊目になるんだろう。今回もご多分に漏れず、及第点を軽く超えてくる出来栄え。

社会問題に触れつつも良質なエンタメ作品をつくることに定評のある垣谷美雨さん。今回のテーマはずばり「農業」。サブテーマとしては「住居」「婚活」「都会と地方」「男性と女性」かな。

どれか1つでもピンときたなら、是非読んでみることをオススメしますw

主人公は30代の女性。 いわゆる派遣切りを受けてしまい、同棲していた男性から離別を切り出され、頼れる親類がいないという。垣谷作品おなじみのバッドスタート。

そんな彼女の独白がこちら。もうね、とにかく見て!

泣くな、私。

――久美子はしっかりしている。

今までずっと人からそう言われてきたけど、本当はそうじゃない。寂しがり屋のくせに素直になれない。

自分を重ねずにはいられない…という読者は多いと思う。不器用で頑張り屋の読者を引き込むのが巧い…!

そんな彼女はテレビの「農業女子」特集をみて、農業を始める決意をする。

まぁ分かっていたことではあるけど、現実は厳しい。まず、農地を借りること自体が非常に難しい。そして、東京から単身でやってきた就農女性への風当たりは決して弱くはない。

それでも、救いはある。垣谷作品の良さなんだけどね。安心して読めてしまう。

主人公はアヤノさんという女性から住居のサポートを受ける。そしてまた別の富士江という女性からは農業のサポートを受ける。

アヤノは教養の高いリベラルな女性。富士江は農業一筋の面倒見の良い女性。正反対の二人は実は学生時代の同級生でライバル同士!そんな二人が助けてくれるという。こういう構図は非常に新鮮で面白かったw

女の意地の張り合いとか、納得の行かない婚活のシーンもありつつ、物語は穏当な帰着を迎える。妥協しつつも人生の幸せを掴んでいくエンディングは爽やかで良かった。その妥協も人生経験を経たものだからこそ、なんだよね。

さらっと読めてしまう、それでいて面白い。オススメの社会派エンタメ小説でした。

でもタイトルと表紙はあまりにもライトというか、ちょっと損してる。。!と思わないでもないw

## 星評価

★★★★☆

今回紹介した本