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【先人の生き様に学ぶ】少しだけ、無理をして生きる - 城山三郎

レビュー

本書のタイトルは「少しだけ、無理をして生きる」。少しだけ、気になるタイトルだ。筆者のことを全く知らないこともあり、興味を持って手にとってみた。

内容は、過去の偉人のエピソードを紹介するというもの。新10,000円札にその肖像画が印字される渋沢栄一を始め、様々な人物が登場する。日本の政治家、アメリカ初の黒人市長、天才棋士…など。筆者の見聞の広さと造詣の深さには感服してしまう。単なる知識を教わっているというより、その時代を生きた人間のみが知る雰囲気までもが感じられるようだった。

彼らの生き様やエピソードを前にして、読者は生き方の示唆を得ることができる。ただし、手取り足取り教わるような感じではない。自分から心を開示して手を伸ばせる読者じゃないと、何かを得ることは難しいかな。

そういう意味では若い人や、読書なれしていない読者にはあまり推奨できないかもしれない。

筆者は「経済小説を一ジャンルに格上げした先駆者のひとり」人物とのこと。ぜひ、他の著作、とりわけ「男子の本懐」は読んでみたいと思わされた。

第1章 初心が魅力を作る

初心を持ち続けるということはずっと初々しくあるということで、自分に安住をせず自分というものを無にして人から受信し吸収しようとする生き方

第2章 人は、その性格にあった事件にしか出会わない

この章では渋沢栄一を例にして彼の人生を紹介する。 渋沢栄一は地方の出身だったがひたすら勉強して知識を吸収した。ひょんなことからパリに行く使節団に同行し現地で多くを学んだ。彼のパリ滞在中に大政奉還が行われて、 彼は帰国後に大蔵省に入省することとなる。そこでは海外で学んだ知識や経験を活かして、政治の制度設計に深く関わっていく。例えばそこでは太陰暦が廃止されて、太陽暦に変更された。

3章 魅力ある指導者の条件 4章 父から息子に伝えるべき事情

歴史上の人物や作家を例にして、生きるヒントについて書かれる。けれど抽象的すぎるし項目が絞れておらず、あまり参考にはならないと感じた。

第5章 少しだけ無理をしてみる 6章 自ら計らず

かつての総理大臣である広田弘毅を取り上げる。彼は歴史上初の平民出身の総理大臣であり、若い頃から大変勤勉だった。「自ら計らう(自分を利する)」ことはせず、いつでも他人のために尽くした。

戦後、社会体制の大転換期において、このような日本人がいたのかと新鮮な発見があった。

第7章 人間への尽きせぬ興味 8章 強く生きる

また別の人々を取り上げる。米国初の黒人市長やグルメレポーター、100歳の作家から天才棋士まで、様々な人物の逸話や生き様を紹介する。それらは読者に、どのように人生を送っていくかの示唆を含む。

「人間が行きていくということは、どこかで、<あるべき姿を求める>ことではないでしょうか。(中略)私たち一人一人がそれぞれの柔らかい個人主義の中で、人間のあるべき姿を求めて生きているのだと思います。」p162

第9章 人間を支える三本の柱

人間を支え得る三つの柱は「セルフ self」「インティマシー intimacy」「アチーブメント achievement」と精神科医の石塚幸雄さんは説く。

第10章 男子の本懐

章のタイトルは「男子の本懐」。筆者の別の著作と同名。浜口雄幸の生きた人生と政治家生命が中心となる。

解説

「良い習慣は才能を超える」解説者の言葉より。

星評価

★★★☆☆

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