レビュー
台湾におけるコロナ対策のキーパーソンとして、一躍有名になった感のあるオードリー・タンさん。かく言う自分も、この方を知ったのは2020年に入ってから。良い機会なので、インタビュー本である本書を手にとってみた。
冒頭からいきなり引き込まれる。
ネガティブフリーダムからポジティブフリーダムへ。前者は個人の自由の獲得。後者は外界の他社や何かを解放してやること。
まさしくこれまでの自分の人生とは、ネガティブフリーダムの積み重ねだった。20代は自分のために、30代からは人のために生きようと決めていた。そして自分はいま29歳。なんという良いタイミングでこの本を選んだんだろうか。
インタビュー内容は多岐に渡る。ジェンダー・仕事・言語・AI・価値観、など。多岐にわたるが、語り口は易しい。おそらく若い読者や、読書慣れしていない読者でも問題なく読めると思う。
さらに、台湾の社会体制についても学びを得られる1冊。台湾が2重国籍を認めているのは知らなかった。バイリンガル教育にも力を入れているようで、かなり国外にも開けている印象。自分の将来の選択肢として、台湾に一定期間滞在して、現地で働いて、そして国籍まで取得してしまう。そういう未来も無くはないんだよなと。
面白かった。インタビュー本なのでそこまで深い内容ではないけど、読み物としては面白かった。
引用・抜粋
冒頭
スマホの指でスクロールできてしまう挙動は、しまいには依存症を起こす。
必要とされているのは単なるAIではなく、権威的なAIでもなく、支援型のAI(Assistive Intelligence)。
第一章 格差から自由になる
SNSにより、格差が可視化され、「知らん顔ができない時代」になった。
問題への怒りはある種有効だが、問題が構造的で解決が難しいとき、無力感が続くことも。そんなときは自分に問いかける。そして周りを巻き込み、広めていく。
ダイバーシティは意見を聞いて終わりじゃない。それを意思決定に取り入れてインクルージョンとする。
第二章 ジェンダーから自由になる
14歳の時に台湾を旅し、原住民や言語から多様性を学ぶ。
筆者はトランスジェンダーでもあり、それ以上に二元論自体からフリーになった。
ユーモアを武器にした例として、ピンクマスクの話は面白かった。
台湾の同性婚は、両家の親族化が必須ではない。あくまで個人と個人の契約。これゆえ、反発が和らいだ?
第三章 デフォルトから自由になる
筆者は保守的アナーキストを自認。何かを排除することなく、伝統を守る。道教的とも言える。
ロビー活動的なものは記録されて公開される。
80年代後半、戒厳令が解かれたあとの台湾に真実の報道をもたらしたのは、当時香港にいた国際ジャーナリストたち。 筆者はそれを恩義に感じている。
台湾はバイリンガル国家。土着の母語に加えて英語。多数の言語を理解することは、多数の文化を理解すること。トランスカルチュアル。
第四章 仕事から自由になる
ハンコ問題は実は紙問題。
AIの本質は労働ではなく、私たちがどこに価値を置くか。
星評価
★★★★☆