レビュー
個人事業主になって3年が経った。個人事業主と言えば、確定申告だ。つまり節税のチャンスだ。これまでは独学でやってきたけど、そろそろ節税系の本でも読んでみるかと。そんな気持ちになった。
筆者は元・税務署員。これはとても説得力がある。実際に、本書の内容はかなりぶっちゃけが多い。節税というか税金にはグレーゾーンが多く、そこが難しいところなのだけど、やって良いこととやらない方がいいことについて、筆者はうまく解説してくれる。
どちらかと言うと個人事業主が参考になる本かな、と思いつつ、会社員でも学ぶところはあると思う。
具体的な話が多くて助かる。生命保険料控除、専従者控除、共済の利用など。初見の節税術がいくつかあった。
さらに、マインド的な部分も学べる。経費、確定申告、税務署について、「こう考えた方がいい」という姿勢を教えてくれるので安心感がある。
大変な良書だった。個人事業主になる前に読んでもよかったなと。そう思えるくらいの1冊だった。
引用
ここからは、読みながら書いた引用など。
1章 サラリーマンのほとんどは税金を払いすぎている!
所得控除で税金が減る!という、個人事業主には常識的な話。
税務署員は扶養家族が多い。= 扶養控除のメリットを活かしている。 扶養家族は、同居人に限られない。実家の親への仕送り、も対象に。(ただし親が無収入である必要がある
雑損控除は、諸々の損失あるいはその補填の費用が計上できる。盗難、シロアリ・スズメバチ駆除など。
厚労省が指定した温泉やスポーツ施設を、医者のお墨付きで訪れた場合には、医療費控除の対象になる。こどもの歯列矯正も。
社会保険料控除の裏ワザ。 追納と前納を活用する。他人の分の肩代わりでもオッケー。
生命保険料控除について。貯蓄型の生命保険にして控除を受ければ、数%の利息がつくようなもの。そして個人年金保険、介護医療保険も対象になる。
2章 確定申告のポイントは公私混同
スーパーの買い物は経費にならない。
家賃は仕事にも使ってるなら按分をして、目安は6割。ただし手狭な場合は8割以上でもオッケー。
個人事業主にとって、交際費の限度額はない。 目安は以下の通り。
- ①人と会っている
- ②仕事の話をしている
- ③全額を自分で払った
物品の購入は10万円以下に抑えて、全額損金とする。このときの金額はセットでの金額となる。椅子とテーブルのセットで12万円、のような。 10万円を超える場合は固定資産となり、償却する必要があり。
携帯代は按分。
書籍代は幅広く経費と認められている。情報収集。
習い事、旅行も事業に紐付けて経費化。
ジムや観劇は福利厚生費で。ただし、常識の範囲内で。企業が社員に認めているようなレベルにする。(巻末の追記にて、今は福利厚生費の計上が非推奨であることが書かれる。
税法では社会通念上というグレーゾーンがある。経費算入は常識の範囲内で。
3章 知らないと損する確定申告の裏ワザ
専従者控除。配偶者や親に給与を渡して控除を得る。ただし、年間に半年以上の専従を要する。白色申告の場合は86万円まで。
倒産防止共済を使えば、大きすぎた儲けを翌年以降に繰り越すような効果が得られる。掛け捨てではなく、40ヶ月で償還される。 小規模企業共済はも似たようなもの。ただし、償還は事業をやめたとき。しかし償還金は公的年金と同じ扱いなので、所得よりも税的に有利。
車の購入費用も経費にできる。事業に必要なものを買いに行く、レベルでもオッケー。ただし減価償却は必要。
4章 本当は危ない青色申告
青色申告は複式簿記が難しい。結局税理士に頼むなら、青色申告の所得控除分はそんなに嬉しくないよねという話。
白色申告なら、事実上、記帳の義務はない。
会社か個人事業主かの違いは登記してるかどうかだけ。ただ税計算は違う。 法人は法人税を払うけど、社長は報酬を貰っているという形なので源泉徴収される。一見二重課税っぽいけど、社長の報酬は経費化でき、うまく行けば法人税を減らせる。
領収書をなくした場合、故意でないなら経費計上はオッケー。ただし、実際の金額より少なめに。
概算申告であっても、それが大きくズレていないなら、税務署は否認することは難しい。
5章 税務署に騙されるな!
税務署員はノルマがあり、追徴金の多さで評価される。
税務調査をされる=脱税している、ではない。ノルマのために不審な申告以外にも税務調査することも。
抜き打ち調査は脱税の情報を掴んでいたり、現金商売の場合のみ。原則として、予告調査。
税務署が正しいとは限らない。税務訴訟では負けることもある。
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★★★★★