レビュー
桐野夏生を読むのは「グロテスク」に続き、これで2作目。グロテスクが文句なしの傑作だったので、本作も大きな期待を持って読み始めた。
果たして、桐野夏生は面白い。
食品工場の夜勤パートとして働く4人の女性が、夫殺しを隠蔽するために共謀するという話。ジャンルとしてはミステリーかな。
だけど単なるミステリー小説に留まらないのは、桐野夏生の描写力によるところが大きい。4人の女性はそれぞれに異なる個性と家庭事情を抱えている。それが交互に描かれ、飽きること無く楽しませてくれる。
各々の家庭に充満する、ドロドロとした不幸の空気感の描き方がなんとも緻密。
また、歌舞伎町と裏社会のようなパートも登場する。「闇金ウシジマくん」が大好きな自分としては、非常に楽しめたw
歌舞伎町を根城とする男は、先述の夫殺しの冤罪をかけられてしまう。多くを失った彼は、私的に事件の真相を探ることに…というダークサスペンスの様相を呈する。
また、食品工場の同僚としてブラジル生まれの日本人が登場する。彼は事件の真相が明るみになってしまうような(文字通り)キーを掴んでしまう。彼の純なパーソナリティの描かれ方も相まって、ハラハラさせる要因として良い味を出している。
下巻を読むのが今から楽しみ。
星評価
★★★★★