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【書評】新世界より(中) - 貴志祐介

レビュー

早紀と倫理委員会の長が接触することで、世界の真相がまた一段明るみになった。 ようやく悪鬼と業魔に関する説明が為された。 こんな風に、中巻では子どもと大人の世界が少しずつ繋がっていく感じがあった。(そして大人の都合によって、子どもたちが圧倒的な不条理を受けていたことが分かってしまう。) 上巻での謎を解消しつつ、確実に下巻にバトンを渡す形となっている。

一方で、早紀たち5人がバラバラになってしまうのが悲しくてたまらなかった。 上巻では5人の運命共同体とも言えるほどの結束を見てきただけに、辛い気持ちで読んだ。

一足先にすべてを理解して身を引いていく瞬に、心が締め付けられた。 この世界の都合のせいで真理亜と守が離れていく様に、やるせなさを感じて仕方なかった。(でも、これがまさか下巻への伏線になっていくとは…。)

中巻では、真相が明らかになっていく部分もあれば、より謎が深まっていく部分もあり、その塩梅がなんともちょうどいい。 全く中だるみすることがなかった。むしろ、より引き込まれた。

あと、瞬と覚、真理亜と早紀の間で、恋愛感情と言うか性的な接触があるのが個人的にはよかった。 物語の中で説明があるけど、彼らがそのような性的志向を持つようになったのって、あくまで人為的と言うか、文化人類学的な原理をベースにしている。 なので、その具体的な描写があることで、SF小説としての幅が広がっていたように思えた。

星評価

★★★★★

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新世界より(中) (講談社文庫)

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