レビュー
先の展開が気になるような、絶妙な終わり方をした上巻。対して、下巻では予想外な方向へと物語が進行する。
定形通りなら、物語の主眼は「犯行がバレるのかどうか」に置かれるはず。佐竹が主婦たちを追い詰め、宮森が穴となってそこから決壊し始める…のような。
しかし、OUTの下巻ではあっさりと秘密が漏れる。
それどころか、雅子は新たに死体解剖の仕事を依頼される。なんという予想外の展開…。想定をぶち壊してくる型破りさは嫌いではないし、桐野夏生の描写力のおかげでスラスラとページを捲れてしまう。
とりわけ女同士が剥き出しの言葉で精神が削り合うような様はお見事。グロテスクを再読したくなってしまった。
けれど、いかんせん感情移入できないところまで話が飛躍してしまった印象。
佐竹と雅子の心理は尋常ではない。これに移入できる読者は果たしてどれくらいいるのだろうか…。
きっと名著なのだと思う。ハマる読者にはハマるだろう作品。でも、個人的には最後に突き放されて、迷子になってしまったような読後感。
星評価
★★★★☆