書評
三浦綾子と言えば、最も有名な著作は「氷点」だと思う。かく言う自分も、まず氷点を読んだ。
それから、ツイッターで「塩狩峠」の名前を見るようになった。例えば、「名刺代わりの小説10選」みたいな。読書系のハッシュタグツイートで、しばしば目にした。
気になって購入。自分にとっては氷点以来、2作目の三浦綾子となった。
「塩狩峠」の時代設定は明治時代。読みながら、昔の人たちのシンプルな生き様、シンプルな人生が少し羨ましくなった。
そんなシンプルな時代において、主人公の信夫が少年から大人になっていく。その過程では、身近な人の死、病気、罪などを目の当たりにする。
その度に、信夫はキリスト教の信徒や教えに触れる。そして読者もまた、キリスト教の教えや教義について自然と触れることができる。
給料泥棒をした同僚の三堀の許しを乞うため、上司に土下座をした信夫の姿には、不覚にも泣きそうになった。
信夫の遺書より、「苦楽生死、均しく感謝」という言葉が気に入った。自分もこんな境地に至れたら、と思った。
ただ一点。結核で「びっこ」のふじ子に対する周りの差別発言があまりに酷すぎた。時代、なのかもしれない。そんな時代の空気感を学べた、という意味では読書の醍醐味とも言えるけど。
あと、細かいけど、信夫が読書の癖がいい。書籍を手に乗せて、その重みを味わうという。真似してみたいと思わされた。
総評としては、悪くなかった。キリスト教小説として、重すぎずにライトに読めてしまう。氷点が傑作なら、塩狩峠は良作かな。
星評価
★★★★☆