32歳になっても幼児の知能しかないパン屋の店員チャーリイ・ゴードン。
そんな彼に、夢のような話が舞いこんだ。大学の偉い先生が頭をよくしてくれるというのだ。 この申し出にとびついた彼は、白ネズミのアルジャーノンを競争相手に、連日検査を受けることに。
やがて手術により、チャーリイは天才に変貌したが…超知能を手に入れた青年の愛と憎しみ、喜びと孤独を通して人間の心の真実に迫り、全世界が涙した現代の聖書(バイブル)。
レビュー
言わずと知れたSFの必読書。
知ってしまうことの残酷さはあるのだけど、自分は知らないよりも知っていたい。 だから手術を受けるというチャーリーの選択には全力で同意した。
知性の獲得が、より高度な愛の発見に寄与するのが面白かった。
そして知性が失われていく過程の描写に打ち震えた。 知能の向上がSF的な要素であるのに対して、その衰えは広く万人に当てはまるものだから、物語の終盤はもはやSFの域を出ていた。
知能が失われた後も、原初的な暖かい感覚は残っていたのが泣けて仕方なかった。そしてそれを原動力にして、人間はいつでも向上心を持てるのかもしれないと、希望を与えられたような気がした。
そして文学ならではのレトリックも良かったね。訳者の技巧の高さに舌を巻いた。
星評価
★★★★★