高野信念はオタクグッズ会社経営の35歳。偶然出会った病気がちの彼女・妙と過ごす時間を増やすため、彼女の父親(強引・無口)に勧められるがまま在宅個人投資家に転身した。ネット投資に精を出す彼に時々届く間抜けなメールには、どこか宇宙人っぽさが感じられる…。
謎の相場変動の原因は本当に宇宙人の所業か?高野は艱難辛苦を乗り越え無事に妙と結婚できるのか?
いい歳したオタクが一喜一憂する恋愛金融SF!
レビュー
恋愛金融SF!と銘打ったこの「宇宙人相場」。 未知のジャンルに興味を惹かれて手に取ってみた。
まず、テイストがとってもラノベ。 ラノベ特有のズレたキャラクター達や、寒い会話が少し鼻に付く。 それでも、ストーリーとしては大筋良かった。
主人公は35歳の元オタク。そんな彼がある日突然、病気がちな女性と出会う。 彼女に残された時間は長くはなく、そして医療費も嵩む。そんな彼女との生活のために、主人公は仕事を辞めて株取引を本業にしてしまう。
というと、ちょっと重たくてシリアスな話かと思いきや、ラノベ調なのでサクサク読める。 作者自身がリーマンショック以降にトレーダーをやっていたらしく、金融知識については申し分なく、読み応えがあった。
そしてこの小説のSF的エッセンスとして、宇宙人とのコンタクトがある。 物語の序盤から、主人公の元に宇宙人からの謎のメールが届く。ひょんなことから、彼らは証券会社のサーバに不正アクセスしてしまう。 なんと斬新なファーストコンタクト!
そして最終的には、宇宙人こと自走プログラムは主人公のPCに移り住み、不思議な同居生活が始まる。 申し訳程度ではあるけど、彼らの出自についてもきちんと解説が為されているのもポイントが高い。こういうゆるふわなSFって、そういうところの解説が疎かになりがちなので...
というわけで、期待以上に面白い小説だった。 あと、ハヤカワ文庫のメタジョークで笑えたw
星評価
★★★★☆