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【書評】定年オヤジ改造計画 - 垣谷美雨

レビュー

「定年オヤジ改造計画」

タイトルから察せられるのは、どうしようもないオヤジが周りの人々によって再生していくという話。 もうね、いつも通りの安定した垣谷節を期待していた。どうせ、面白いに決まっている!と。

果たして、内容はそのとおりだった。だけど、手法が違う! 一人称がオヤジなのだ。

定年したオヤジには妻と息子と娘がいる。 このオヤジが家族に放つ言葉がいちいち酷い。

「男は仕事で疲れているのだから、家事なんてしなくていい。」 「女には母性愛があるから、育児が辛いわけがない。」

そんなことを平然と言ってのける。 妻は諦めたような顔をし、娘は面と向かって否定してくる。

でも、オヤジにはそれらのリアクションの理由が分からない。自分が正しいと思っているからだ。 こんなオヤジが一人称の小説、、、読んでいる方が辛すぎる。

でも新鮮さがあった。 他の垣谷作品では、女性の一人称から愚かな人間(主に男性w)を描くから、 こんな作風もイケるのかと、改めて作者を好きになった。

しかし、ひょんなことが再生が始まる。 息子夫婦からの依頼で、オヤジは孫の面倒を見ることになった。

ありがちな話だけど、育児の世界に足を踏み入れたオヤジは、それがどれだけ大変なことか身に沁みて理解する。

でも、面白いのはここから。 息子は完全にオヤジの背中を見て育っているのだ。

息子もまた、働いている妻を家政婦か何かのようにしか扱わない。 そんな息子に過去の自分を見たオヤジは、息子を更生しようとしていく。

オヤジと息子の相互作用的な再生が本当に良すぎて、思わず涙腺が緩んだ。

正直、ご都合主義を多分に含んだ作品だと思う。 地元の親類たちはリベラルな考えを持っているし、孫はあまりにも良い子だし、そして何より、オヤジは愚かではあったけど自省はできた。

だからあくまでファンタジー的なのだけど、物語のエッセンスはとても意義のあるものだった。 人間はいくつになっても変われるのだ。生き方は多様でいいのだ。

ああ、とても良い本を読んだ。

星評価

★★★★★

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