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【絶賛!中国SF】 三体 - 劉慈欣

レビュー

絶賛売出し中の三体。ようやく読めた。

まず、文化大革命のシーンから始まるのが良い。中国固有の歴史を描くことで、中国SFとしての色が濃くなっていた。 しかもこれがきちんとした伏線になっているという。

その後、時代は現代へと移行。 「三体」というゲームが登場するのだけど、このあたりからSFが始まっていく。

ゲームという媒体がとても良いよね。 自分はSFが好きだから抵抗はなかったけど、SFファンではない人にとっては、ゲームであることでSFへの抵抗がだいぶ薄まったんじゃないかなと思う。

三体の世界はちょっと不思議で、乱紀と恒紀が交互に訪れる。 乱紀では太陽の運航が不規則。極寒と灼熱が交互に襲ってくる世界になっている。

その度に文明は滅び、「またのログインをお待ちしています」という機械的なセリフで締めくくられる。 非常にゲーム的で良い。

めちゃめちゃ無粋だけど、自分だったら「三体 答え」でググってしまいそうw

あと、「乱紀だからな」とか「再水化!再水化!」とか、記憶に残るセリフが多いw 人間が脱水してしわしわの布みたいになるのも、なんだか可愛くて笑えたw

そんなコミカルでSFなシーンと並行して、ミステリーライクなストーリーも進行している。 どうやらこの世界には謎の勢力がいて、科学技術の発展を阻害してくるのだ。

この謎の勢力との戦いと、三体世界の正体が、なんとも良いテンポで絡み合っていき、上巻としてきちんと収束を見せる。 たいへん上出来!中巻が読みたくなる幕引き。

上出来なストーリーに埋もれてしまいそうだけど、文革のその後を描くのも良かった。 文革に人生を飲み込まれた少女たちは、懺悔することもできず、過去の中で生きている。 社会的な側面を含むことで、SF小説としての幅が広がっていた。

大森望による翻訳が良すぎたのも加点要素。 「1ミリ」とか「リア充」とかw、日本語にだいぶ寄せてくれる印象があり読みやすかった。

総評としてはSF小説としてなかなかに名作だった。 SFファンとしては、「ケン・リュウ」や「折りたたみ北京」など、中国SFブームの萌芽は少し前から感じていた。 だから中国SF!新しい!という感じはなく、むしろ普通におもしろいSF小説といった印象。

そして随所で、大衆受けしそうな要素があり、なお一層のブームが楽しみ。

星評価

★★★★★

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