レビュー
東京の大学に進学した時。東京で一人暮らしを始めた時。東京の会社で働き始めた時。 その度に一度は胸が高鳴った。
けれど、僕らの日常というのは、油断するとすぐに新鮮味を失う。 気がつけば28歳になり、単調な毎日を暮らしていると感じる時がある。
そんな日常に彩りを取り戻そうと何度か試してみた。けど、持続しなかった。 そのためには継続的な努力と工夫が必要だと自分は感じている。
それが面倒で、また退屈な日々に陥ってしまう。 日常を楽しむというのは1つの才能なのだと思う。
雨宮まみという女性は、きっとそんな才能を持った人だった。 人生を楽しむための欲望を追求し続けた人だった。
だけど、その代償として孤独や苦悩を払い続けた人でもある。 40歳という若さで亡くなった彼女は、人生の最後の瞬間まで戦っていたのだと思う。
そんなありのままの姿をさらけ出してくれるから、この人のことを好きだと思える。この本を読んで良かったと思える。
退屈な日常に変化をつけたくて、自転車通勤を始めてみた。 蓋を開けてみれば、新宿と六本木の距離は通えない距離ではなかった。
朝の東京が、そして日の沈みゆく東京が、こんなにも綺麗だなんて知らなかった。
ちょっとした工夫で、僕らはまた新しい東京に出会うことができる。 そんなことを教えてくれる、魂のエッセイだった。
星評価
★★★★★