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【レビュー】スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む - ヨーランスバネリッド

レビュー

「時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。」の参考図書としてリストアップされていたので、気になって読んでみた。

内容は非常に平易。タイトルの通り、スウェーデンの小学生が利用している教科書を読み解くというもの。大学の教授がゼミ生たちとわいわい言いながら、内容を追っていくスタイル。

ゼミ生の発言からはとても純粋なものを感じてしまうし、脈絡なく挿入されるゼミ生の写真はどこかシュールだった…笑

それでも、内容はよかった。当たり前だけど、自分は日本の教科書しか読んだことがない。外国の教科書を、日本語でよむというのは案外貴重な機会だったかもしれない。

小学校の教科書というのは、社会の鏡でもあると思う。スウェーデンでは、子どもをすでに社会の構成員と捉えており、現実に即した内容を教えているのが印象的だった。SNSの負の面や、税制についてなど、大人が読んでも面白く思える内容だった。

引用・抜粋

第1章 社会

(割愛)

第2章 ソーシャルメディア

スウェーデンの教科書では大々的にソーシャルメディアについて教えている。独裁政権SNSへの監視や、デマ・プロパガンダについても教えている。その上で、うまく発信することを推奨。反対に日本では、 SNS禁止を出している学校も。そもそも教育現場での政治活動に消極的だったりする。

総務省によると、SNSで積極的に発信する層は15%のみ。(2015年) うまく発信できていない上、デマやプロパガンダに騙されている人も多い。

第3章 個人と集団

なぜ人は他人と生きるのかという問いがある。それは、コミニュケーションを通じて学び合えるから。

いじめについて。個人の問題に帰せずに、グループが機能していないからだという考え。イジメられている子どもには行動するよう(相談・報告)、グループについては問題が解決されるよう、推奨。イジメのホットラインは実績があり、実践的。

日本に比べて、スウェーデンの離婚率は高い。しかし、教科書では離婚=不幸とは教えておらず、子どもがそのことをどう受け止めればいいかまで教えている。

さらに、同性夫々(婦々)にも言及あり。

しかし、自主性に任せすぎて学力が低下している現実はある。

第4章 経済

経済のセクションは、貧富に関する言及から始まる。物乞いという用語が出てくる。お金持ちと貧しい人の気持ちを考えてみるよう、書かれる。

ご存知の通り、スウェーデンの税金は高い。平均して稼ぎの1/3は納める。ただし、医療費がタダなことが多く、道路代もタダだったりする。

経済と無関係ではない移民や環境についても言及される。環境については、持続可能性というポイントで書かれ、その決定が難しいことも説明される。

スウェーデンでは多くの国民が自分で確定申告するので税金への理解・関心が高く、教科書でも税について触れられる。

世論調査によると、9割の人が自身を中流と捉えている。社会の安定的にこれはとても良い調査結果。

第5章 政治

政治的な発信をするときは、誤字なく、自分は冷静な発信ができるということを見せる。

ベルギーやオーストラリアでは投票は義務。しなければ罰金。

第6章 法律と権利

スウェーデン基本法は4つ。出版の自由、表現の自由、統治に関して、国王女王について。日本国憲法に相当。

犯罪の名称一覧が提示され、なぜ犯人がそれぞれの犯罪を起こすのか、小学生に考えさせる。

死刑はなく、刑務所も更生という意味合いが強い。

訳者あとがき

スウェーデンの教科書は素直。現実に即して、教えるべきことが書かれている。その根底にある考えが、子どもを保護対象であると同時に社会の一員とみなしていること。日本では、最終学歴までは子どもとして扱われ、働き始めると社会人としてカウントされる。

主権意識の薄まりは民主主義にとってリスク。