日々是書評

書評初心者ですが、宜しくお願いします ^^

【学び直しの入門書】自分ごとの政治学 - 中島岳志

「時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか?」で紹介されていたので読んでみた。

ページ数は少なく、文章もシンプル。小学生でも読めるのではないかと思う。内容は非常に初歩的ながら、社会人でも学べる部分はあると思う。

リベラルとは、保守とは、政治にまつわる用語を筆者の視点を交えて解説していく。

それから、あまり知られていないガンジーの生涯について書く。若い頃の奔放なエピソードは知らなかったので、面白く読んだ。

民主とは、現在を生きる人間が主語。法律は一定の賛成のもとに変更可能。立憲とは過去の死者が主語。過半数がイエスと言っても、憲法は簡単には変えられない。そこには、先人の経験と失敗に起因する経験知が含まれる。

死者の眼差しを議会に呼び込むのが立憲民主主義だが、最近は軽視される傾向。

面白かった。いわゆる学び直しの、その入門書として最適な一冊。

巻末には、分野ごとの次に読むべき本のリストが掲載されており、初心者にとって非常に親切。

以下、引用・抜粋。

左、右とは所詮相対的な味方。また、その起源について。議場の座席。

プラトンイデア概念は、人間には到達不能なもの。しかし、探究を諦めてはいけないし、探究する者を哲人と呼んだ。政治とは、哲人によって為されるべきもの。大衆による民主主義は衆愚へ向かう、とも。

デカルト懐疑主義。今自分がいることは確証がない。夢の可能性がある。しかし、疑うことそのものは疑えない。我思うゆえに我あり。ここから、近代の合理主義が生まれていった。

王権神授説ではなく、理性をベースとするなら、国民すべてに権利がある、との考えでフランス革命が起こり、国民国家が生まれた。

左派は理性的な考えを重ねることで、社会をよくしようとする。その1派が社会主義。すっかり衰退傾向に。もう1派が社会民主主義。話し合いによって、国家を主体とした徴税と分配を目指す。また、過激になるとアナーキズムへと。

右派について。右翼とは原理主義。過去のある時点に戻ることで、理想社会の実現を目指す。拠り所が、アッラーだとか天皇の御御心ということになる。保守の原点は、人間の理性が完璧ではないと思うところにある。過去の蓄積を利用し、永遠の微調整を行うことで改善を試みる。

保守vsリベラルと言った対立軸で語られるものではない。

筆者の考えでは、右・左というより、お金と価値というベクトルで考える。