日々是書評

書評初心者ですが、宜しくお願いします ^^

【和食を初期化する】一汁一菜でよいという提案 - 土井善晴

レビュー

以前「くらしのための料理学」を読んで、土井善晴さんに興味を持った。

というか、思いっきり影響を受けているw お盆を買ってみたり、布巾でサッとテーブルを「清め」たり。

ぜひ別の書籍も読んでみたいと思い、本書を手にとって見た。

なるほど、良かった。相変わらず文章が読みやすく、飾り気が多すぎず、それでもキラリと光る。くらしのための料理学と重なる部分はあるけれど、味噌の話や過去の日本の話など、面白く読んだ。

随所に散りばめられた手書き文字や、料理の写真も良い。ざっくりとした味噌汁なのに、土井さんの調理だと良いものに見えてしまう…w

決して豪華な食事を毎日作るのではなく、ささやかで良いから気持ちを込めて一汁一菜を心がけていきたい。そうして自分の生活というものに真剣に向き合っていきたいという気持ちを新たにした。

引用・抜粋

今なぜ一汁一菜か

一汁一菜とかただの和食献立のすすめではなく、システムであり美学であり思想であり、そして日本人の生き方。

ご飯(白米)の素晴らしいところは、飽きないところ。人工的な味の濃いものは、すぐに他の味が食べたくなる。

味噌や漬物は、微生物の作品。人間の業ではない。壺の中に微生物の世界があり、その自然らしさが人間と調和する。

食事は風土と結びつきをもつ。土産土法。季節が移ろうこの国において、衣食住は全てその変化に対応するよう進化してきた。

暮らしの寸法

肉やトロの脂身による美味しさは、舌先に触れた瞬間に脳が美味しいと感じる。一汁一菜の料理は、食べ終わった後にじんわりと美味しさを感じるような、身体全体で感じる美味しさ。

シンプルな食事がストレスを減らし、余暇のための時間を生む。

食材を組み合わせたり、濃い味付けをするのは、西洋的で、本来日本的ではない。シンプルに食材の良さを活かす。

ハレの食事は神様への料理。それを人間がともにいただく。神人共食。そこには時短や手抜きはない。時短おせちなんてものはない。

テレビの影響で、現代人はハレの価値観をケに持ち込んでいる。

毎日の食事

一汁一菜の生活ではおかずは不要。味噌汁の方に野菜や肉や魚などの具材を少し多く入れることでおかずの代わりになる。

美味しい炊飯の仕方について。洗米した時に水切りをちゃんとする。それから給水させて洗い米とする。炊飯は炊飯器のいわゆる早炊きモードを利用する。

お湯に塩を入れると塩汁とはならないが、味噌をお湯に入れると味噌汁となる。味噌だけは日本人にとって特別な調味料。

味噌汁には様々な具材を投入するので、美味しい時と美味しくない時があるが、それはどちらでもいいことにそのうち気づく。

味噌汁の温度に関して。具の少ない味噌汁は煮たばかりの熱い時が、一番味噌の風味をよく味わえて美味しい。一度熱してしまえば2回目以降は、そんなに温めなくても美味しい。

少し味噌汁の見た目を気にするなら、具材を少なめにして汁を多くすると良い。

どみその中では塩分やその他の環境的条件から食中毒を引き落とすことする際にはほとんど生きられず死滅する。みその中では健康に良い乳酸菌などしか生きられず食中毒などの報告では一件もない

土井さんは毎食味噌汁を飲んでいる。ご飯の代わりにトーストを食べることもあるが味噌汁は必ずつけている。洋食やイタリアンや中華といった区切りにこだわり過ぎない。家にあるものを食べるという考え方。

作る人と食べる人

高級料亭、チェーン店、コンビニと行くにしたがって作る人と食べる人の関係は希薄していく。

家庭料理とは毎日の営みで命を育む行為。

暖かくなったらたくあんの切り方を変えて歯ごたえをよくするといった小さな工夫でも良い。

人間は自分以外の人のために何かをすることこそが本質であり、その与えがまた新たな与えを生みやがてそれは自らのもとに戻ってくる。

おいしさの原点

和食がユネスコ無形文化遺産に登録された背景には自然を尊ぶということがある。

旬を「はしりもの」「さかりもの」「なごりもの」の三つに分けて、交差する生命の始まりと終わりを五感で感じて意識する。

和食が重視するのは美味しさだけではない。時には食材の不要な部位を捨てるし、煮つめて美味しい部分を逃すこともある。それは澄むことを大事にしている。味覚だけを重視せず、見た目を良くすることで視覚的に補うことも。和食は五感で感じるもの。

和食を初期化する

土井善晴先生の父親も料理研究家

昔の日本人は豆腐屋さんで豆腐を買っていた。豆腐はきれいな水の中で浸されており真四角に切られていた。この真四角という形状が良く、丸いお皿にのせてもよし切ってもまだ真四角という美しさがあった。角が欠けてしまった豆腐は半額どころか目がつかず売り物にならないレベルだった。

敗戦後は体格が小さかった日本人が何とかアメリカ人に追いつこうとしてパンやミルクを食べ飲んだ。米を食べたらバカになると言われるほどだった。しかし実際にはパンヤミルクは米軍の残り物だったり貿易戦略の結果でもあった。

本来日本人は何でも白米と一緒に食べていたが、近年ハンバーグなどのメインディッシュを料理の中に含めることで、他のおかずなどにもお肉を入れないとバランスが取れなくなってしまい、結果として脂質や油が過剰になってしまっている。

一汁一菜から始まる楽しみ

毎日見て触る食器だから良いものを使う。食器は民芸館などで買うと良い。決して焦らずに良いお皿と巡り会うタイミングを待つのも大事。いいお皿を見る目はだんだんと磨かれて行く。

茶道では亭主のおもてなしの趣向や意図を何も告げないのに客自身が察してくれることを亭主の最上の喜びとしています。そのことを亭主と客が互いにもてなし合う心を賓主互換という。

お膳を使うことで食事の空間の外と内を分けることができる。お膳は一汁一菜の舞台。洗う必要はなくて布巾でサッと拭けばいいし、拭けば拭くほど味が出てくる。

酒はハレの日のもの。季節の肴をつけることで一汁二菜になるし、果物をつければ一汁三菜となる。