レビュー
ジョージ・オーウェルを初めて読んだのは2018年、言わずとしれた「1984年」からデビューした。ディストピア小説の代表作であり、現代人でも読むべき名作だという感想を持った。
今回読んだ「動物農場」は、1984年と比較されることが多いように思う。曰く、1984年よりは動物農場の方がオススメだ、等。
果たして、その通りだった。1984年は文量が多いし、雰囲気は暗澹で凄惨。そりゃあ独裁世界を描くディストピア小説なんだから当たり前なんだけど…w
一方で動物農場は、その名の通り動物たちが主役となる。ここにまず、児童文学のような敷居の低さを感じる。
動物が相互に意思疎通をし、中には読み書きを覚える動物までいる。ちょっとフィクションが入っているけど、それぞれの動物の特性は残るので、フィクションすぎることはない。
あくまで種族の異なる動物たちが団結して農場の自由を奪う。物語の冒頭はそのような感じ。
けれど自由を掴んだのも束の間、あらすじから予測できることではあるけど、農場の自由は少しずつ腐っていく。その様がテンポよく、サクサクと読めてしまう。文量も200ページと少量。(あらすじ含め)
以上の理由をもって、1984年よりは入門者向けだと感じた。
それぞれのモチーフは、
かな?
一番良かった箇所は、自由を奪われる側の動物の心理描写かもしれない。自分の感情、要望、観察を言葉にできない諦念がたまらなく上手く描かれている。
あらすじにも書いてあるけど、これはまさしく反抗心を失った市民そのもの。決して他人事ではなく、自戒の念を持たなければならない。(とは言え、1984年を読んでしまうと、果たして自分は最後まで声を上げ続けることができるんだろうか…と自信を打ち砕かれもするんだけど…w)
少なくとも、僕らは読み書きができる。書籍やインターネットを通じて、情報にアクセスすることができる。他者と自由に会話ができる。なんて自由だ!当たり前のようだけど、すっかり忘れていた。そしてこの自由は死守すべきなのだと強く実感した読書体験だった。
星評価
★★★★★