日々是書評

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【主導者なき時代の世界の行く末】「Gゼロ」後の世界 - イアン・ブレマー

総評

アメリカのパワーが相対的に弱まっていき、主導者なき時代がやってきた。筆者のイアン・ブレマーは、そのような状態を「Gゼロ」と表現し、その現状と問題点、そして予想される未来について論じる。

自分がこの本を手にとったのが、2020年5月。初版の発行年は2012年。本書の内容の先見性には驚くばかりだった。

例えば、Gゼロの世界では、感染症が発生しても情報は秘匿され、世界的な流感となってしまうだろうという見立て。

2020年現在、covid-19が世界的に猛威を振るっている。中国の武漢から広がったとされるこの感染症。中国やWHOの初動には、Gゼロ的な欠陥を見いださずにはいられない。

さらに米中の軋轢に関しても、この本が2012年の時点でかなり正確な予測を立てている。

また、日本がどう見られているのかを再確認することもできる。少なくとも、イアン・ブレマーから見て、世界の中における日本の立ち位置について学ぶことができた。

文量は250ページほど。決して分厚くは無い。それでも、読了までに1ヶ月かけてしまった。それほどに多くの情報量を含み、大変学びの多い一冊だった。

参考文献や共同調査はあったにせよ、たった1人の研究者がここまで広範に世界の趨勢を説くとは…。あらゆる人々にオススメできる1冊。

引用・抜粋

ここからは、読みながら書いた引用と抜粋。

はじめに

誰もグローバルリーダーシップをとれない問題について

G20は、参加国が多すぎ、共通基盤もほとんどない。極度に切迫した状況でない限り、重要な問題の解決に向けて実質的な進展は望めない、と筆者は主張。世界的な秩序ではなく、あらゆる国が自分のために行動する世界。

本書は、今日の世界の姿を定義して、来たるべき混乱について予測する。

第1章 Gゼロとは何か?

COP15サミットが崩壊した理由は2つ。一つは、主要先進国新興国との間に、両者とも犠牲を強いられる取引を成立させられるだけの十分な共通基盤がなかったこと。もう一つは、解決策の受け入れを他国に強いるだけの影響力を持つ単独の国または国家連合が存在しなかったこと。

既存の大国と新興国とが、利益と負担の共有に合意することが世界にとって必要。

世界大戦の前には、イギリスが100年ほどリーダーシップを取っていた。

世界大戦で最も被害の少なかったアメリカが次のリーダーとなったものの、戦後のアメリカは負債を増やし続けてきた。そして、借り手として中国に依存するところが大きい。

さらに、アメリカ国民は外への意識が低下し、国内の課題に集中するべきと思い始めている。冷戦時代のソ連のような敵がいないことにも留意。中国は表向きでは和平を謳っているし、中東への派兵は難しくなってきている。

アメリカが軍事的な部分を担っていたから、他の地域は政治経済に投資できた、という側面はある。

アメリカの強さとは、イノベーション志向の文化、復元力の強い経済、世界最高の大学、未来への強い信頼など。

ヨーロッパに関して、政策と政治的文化の相違による対立は避けられない。その結果、外部の課題に取り組む意欲は減少する。また、移民・難民の問題もある。かつ、軍備的にも余裕が乏しい状況。

日本については、巨額の債務問題を抱えていて、政治的に機能不全のまま。

新興国政府は、経済発展を維持しつつ、国民の支持を得なければならない。そのための施策が、国際サミットで他国から要求されるものと矛盾してることは多い。

中国は国際的なリーダーシップを発揮するのに欠かせない自己犠牲精神を絶対に避けようとする明確なインセンティブが生まれてくる。中国の経済成長についても、一人あたりGDPで見れば低く、次なる発展段階に繋げるのは厳しい状況。また、軍事的な行動のプライオリティは高くない。

ロシアに関しては、近隣国に強硬路線を取ってきたものの、エネルギー部門以外での経済を育てることには成功していない。

インドは内向きで、対中、対パキスタンに忙しく、国際政治における影響力は限定されている。

ブラジルとトルコは、周辺地域に関してのみ外交的役割を演じられている。

かつてはIMF世界銀行発展途上国の資金需要をみ満たしていた。その対価は、政治と経済の改革を要求することもあった。現在、中国は大きな融資国となったが、そのように要求を突きつけることはない。

先進国側に関してアメリカとヨーロッパで利害が一致しない以上に、BRICs内でも共通するものはほとんどない。

選挙で選ばれた欧米の指導者たちは、費用が嵩む長期間の軍事行動を国民が支持するのは、死活的な国益が危機に瀕していると国民が信じた場合のみ、と理解している。ユーゴスラビア民族浄化ルワンダの虐殺、スーダンでの人道危機、グルジア侵攻については、彼らは傍観者でいた。

p.50, p.51 では近年噴き上がった国際問題が述べられる。長すぎて引用は割愛するけど、再読したい。

第2章 Gゼロへの道

第二次世界大戦後、アジアとヨーロッパは荒廃の有様だったが、アメリカは比較的ダメージが少なかった。むしろ、戦争支援による国内景気の活況に支えられて、雇用創出と賃金上昇と生活水準の向上が起こっていた。(G1の時代)

円滑な世界貿易と安定した為替相場が、アメリカ経済のエンジンを維持するとルーズベルトは理解していた。IMF世界銀行も、国連でさえも欧米が主力を握っている。最大の輸出市場を守るため、そして共産主義の拡大を防ぐため、1940年代のアメリカはヨーロッパに資金注入を行っていた。マーシャル・プランもその内の1つ。

また、アメリカの支援を受けて、日本も戦後復興を果たした。通産省は国内経済に介入を行い、円の対ドルレートを低く押さえて輸出を支援した。日本の台頭はアメリカの覇権への脅威と見られたが、日本の政治経済体制はワシントン・コンセンサスと親和性が高く、共通する価値観のおかげで国益が対立しないように調整できた。1975年、アメリカ、日本、イギリス、西ドイツ、フランス、イタリアは先進工業国グループであるG6を作った。翌年、カナダが加わってG7となった。

50年代までは、アメリカ、とりわけテキサスが世界への石油の輸出の大半を担ったいた。しかし60年代に入り、新たな油田が見つかり、供給地が多様化した。中東諸国は政治的、経済的に石油を利用するために団結し、OPECが生まれた。

第四次中東戦争で、イスラエルを支援したワシントンに対して、OPECアメリカへの石油輸出を禁止。石油価格は年末には4倍に。

また、金とドルの提供によって安定を図るブレトンウッズ体制についても、揺らぎが発生した。アメリカはベトナム戦争で経常赤字と貿易赤字となりインフレが悪化していた。ヨーロッパの数カ国はドルに連動して自国通貨が弱くなるのを懸念。金交換を要求した。 これを受けて、ニクソンブレトンウッズ協定を終了させた。いわゆるニクソンショック

70年代、アメリカの力に揺らぎが見えると、支援については条件付きとなった。

日本は賃金上昇が起こり、生産コストが上がった。これにより、韓国、台湾、香港、シンガポールに生産が移転された。これらのアジア諸国の輸出先はアメリカであり、大きな経常黒字となり、世界初の新興市場国となった。さらに、タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシアがあとから続いた。

中国の台頭は、毛沢東の死から始まる。2010年には、日本を抜いて世界第2位の経済大国になる。転換期は、鄧小平が経済特区などの施策を打ち始めた1970年代。この門戸を開く後押しとなったのが東欧における共産主義の衰退。

ソ連が解体されると、ロシアを抱きこむためにG7はG8となった。

ワシントンが政治経済のグローバルリーダーを引き受けたおかげもあり、新興国は台頭し、主張を強めてきた。が、しかし、自らがグローバルリーダーになることには躊躇するレベルだった。

リーダーシップ不在の世界の危険性を生々しく解説してくれるのが、核兵器の拡散。

国際政治を決定するのは変化を強制する力と、それに抵抗する力の2つ。

鄧小平の死後、米中の利害はしばらくの間一致していた。アメリカは安価な労働力を確保、アメリカの消費者は低価格な輸入品を獲得しアメリカ経済のインフレ抑制のなった。中国は発展に伴い、工場労働者があふれた。中国は米国債を大量に購入し、アメリカの購買力に寄与した。しかし、三十年にわたり二桁成長が続いた中国は、社会不安に見舞われていた。その要因は、沿岸部と農村の格差、大気と水の汚染、地権争い、汚職など。昨今の中国経済は国家資本主義。共産党を脅かさないようにコントロールしている。

リーマンショック以降、米中の差異は均衡点を超え、自由資本主義と国家資本主義の間の摩擦は強まってきている。

アメリカは80年には世界最大の債権国だったが、87年には世界最大の債務国となった。ブッシュ政権はさらに赤字を加速させた。

第3章 Gゼロ・インパク

Gゼロは問題を解決できないばかりか、新しい問題を生みだし、既存の課題を複雑化させて対処困難にしてしまう。この章では、国家間の紛争、国際基準をめぐる争い、空気と食料と水、について論じられる。

Gゼロの世界では、中等とアジアで動乱が起こる可能性が高い。中等はアメリカが手を引き始め、かつロシア中国ヨーロッパもリーダーにはなれず、政情は不安定。

アジアは武力闘争の危険性をはらみつつも、経済の原動力として重要な地域でもある。しかし、十分な協力関係がない。アジア諸国の問題は、アメリカの軍事力に頼っているところ。アメリカは軍事費を削減しているし、中国が力を強めてきている。

しかし、アジア以外の地域においては、グローバルリーダーの不在が生んだ真空を埋める動きが見られる。南米ではブラジルが、中東ではサウジアラビアなどが、アフリカではナイジェリア・南アフリカケニアウガンダエチオピアなどが、地域の紛争解決や安定化の役に立つかもしれない。

危険が及ぶのはサイバー空間においても同様。Gゼロの世界では、サイバー攻撃に対して協調して対応することが困難。

Gゼロの世界では、力の均衡を決めるのは軍事力ではなく経済力。貿易においては、地域ごとの保護主義が高まると見られる。投資制限や貿易障壁など。

中国は自国の通貨価値を不当に低く抑えている。他国に融資する際は、中国の労働者や資材を使うように要求する。そのような理由で、中国への批判は高まっている。

国際基準について。

ドルの強さは当面は変わらないものと予測される。他の通貨では代替できない。 テクノロジーについては、戦勝国である欧米が中心となって規格を決めてきた。そのことに中国は反発しているが、中国の「自主創新」で生み出されるものは官僚的プロセスによる、政治的妥協の産物でしかない。

権威主義的な国家はインターネット空間を分断したい。

環境問題について。

地球温暖化の議論については、京都議定書以降、全く進展していない。また、世界的な対策を実行するとして、その費用の分担方法は決まっていない。世界的な公共財の分担方法が決まっていないのは、G0の問題として特長的。また、各国が独自で対策をするとして(地球工学的アプローチ)、その影響がどうなるかについて、他国は予想できない。というか、問題が起こってから知ることとなる。

一方で北極海では、温暖化の影響で氷解が起こり、ビジネスチャンスが生まれている。地下に眠る資源にアクセスしやすくなり、また、安定した航路が開ける可能瀬もある。しかし、北極海周辺諸国で主導権を握るリーダーがいない、というG0問題が再び現れてくる。

水と食料の問題について。

G0によって、主要な食料輸出国と輸入国の重責を合意する可能性が低まっている。

2007〜2008年に食料価格のインフレが起こった。2008年の金融危機はこの過熱感を抑えた、という側面もあった。しかしその後、2011年頃から再び食料価格は上がり始めている。

新興国の食のスタイルは穀物中心から、肉中心になっていくと予想される。これは世界中で展開された歴史的パターン。その結果、飼料としての穀物需要は非常に高まる。

食糧危機の煽りを最初に受けるのは都市部の貧困層

バイオ燃料も食料供給に圧力をかけている。アメリカで生産されるトウモロコシの30%はバイオ燃料に使われている。ちなみに、石油価格が上昇するとバイオ燃料需要は高まる。またバイオ燃料に必要な穀物の輸送コストを上げてしまう。

G0では、食糧危機に際して、輸出国のパワーが不当に高まる。水問題に関して。中国の河川源泉数は世界最大。しかし、ダム建設により、近隣諸国から不満が出ている。かつ、中国からのダム技術の輸出により、さらに水問題は深刻化する恐れがある。

第4章 勝者と敗者

アメリカ一強時代でも、Gゼロ時代でも、それ自体が善か悪かという話ではなく、強者も弱者も生まれる。

中東地域において、チュニジアの暴動、エジプトでの革命、バーレーンでの激怒、イエメンの大混乱、シリアの虐殺、リビアの内戦など、勢力均衡が変化している。アメリカの介入する余地は小さくなる一方。しかし、中国はサウジアラビアにとっては有力なパートナー足り得る。石油の輸出先として申し分なく、サウジの若者の民主化を支援することもなく、中国から自国のインフラ投資を期待できる。

「中国は100年後もアジアにいるが、アメリカがそうとは限らない」

パキスタンは、アメリカからの支援を失えば、対インドの同盟国として中国を選ぶかもしれない。

勝者となるためには、個々の独自ルールで勝負できる世界になったことを認識するべき。旧来の単一解放市場幻想に囚われていると、後追いとなる。

ブラジルはピボット国家として成功している。その地域において、大きな消費者市場を抱え、中産階級が1億人を突破し、米中との通商が良好。特定の国家に依存しない環境ができている。

トルコは中国の2倍、インドの4倍の平均所得。NATO加盟国として、欧米への存在感を持てている。他の中東諸国よりもイスラエルとの関係を持ち、地政学的にも重要なロケーションに位置する。

アフリカは中国マネーやインフラ開発を積極的に受け入れ、ピボット国家が多数生まれている。

インドネシアベトナムは輸出入の対象がバラけているという点でグッド。シンガポールはアジアの有力国家に接触できる拠点を広く、外国企業に提供した点で成功している。

モンゴルはロシアと中国に挟まれつつも、アメリカやアジア諸国とより良い通商関係を求める「第三の隣国」政策を採用。カザフスタンは資源の輸出で世界最速の経済成長を果たし、かつ最大の輸出先はEU。どちらも中央アジアにありながら、ロシアと中国に依存すること無くうまくやっている。

カナダはアメリカから受ける影響が減っている。アジアとEUとの通商を模索中。

Gゼロでは制裁の効力が弱まる。アメリカが北朝鮮に制裁を課したものの、地域の混乱を避けたい中国が庇護を提供してしまっている。ミャンマーの軍事政権はインド中国からの資源需要という後ろ盾がある。かつ、ベトナムとタイとの経済的なつながりを持っている。

企業においても、適応力の高い企業が勝者となっていく。とりわけインドのタタ・グループの適用力の高さは注目。

Gゼロで栄えるのは保護者と詐欺師。

保護者とは、軍事産業、サイバー攻対策産業、産業保護産業など。ブロック経済化、世界のブロック化により、自衛の必要性が高まるため。

詐欺師とは、ルールを無視する国や企業。例えば、ブラッド・ダイヤモンド問題。倫理的な理由から、先進国は残虐行為を行うアフリカ諸国からダイヤモンドを輸入するわけにはいかない。しかし、発展途上国はその限りではない。という問題。

敗者となるのは旧態依然としたルールにしがみつく勢力。NATOは本来の役目を果たしたのに存続を続けている。IMF世界銀行は、その貸出額に関して中国を下回っている。

リスクにさらされる国のコストは上昇する。ワシントンの防衛力を期待していた日本やイスラエルなど。

日陰国家はピボット国家になることはできない。メキシコはその通商好機と発展をあまりにもアメリカに依存している。ウクライナは政治的かつ経済的にロシアとEUの板挟みになっている。

キューバは上手いこと依存先を切り替えてきたが、リビアカダフィは味方を得ることができず孤立した。

勝者であり敗者でもある国家、もありうる。

ベトナムなどのアジア諸国はピボット国家として成功しているが、中国依存がある。将来的には中国人労働者が高給を要求する、といったリスクを孕む。

ロシアはアメリカからの干渉が弱まってきたという点では、Gゼロの恩恵を受けている。一方で、中東への影響力が弱まっているし、中央アジアでは中国と競うことなる。

中国は成長率は非常に高いものの、成長の大部分を海外への輸出、つまり外国の消費性向に依存している。また、中国共産党の変化を厭う性質は改善されるべきかもしれない。

第5章 来るべき未来

Gゼロが続く限り、問題は起き続ける。しかし、これは常態ではない。真空は埋められる。本章では、次に何が起こるのか、誰がリーダーとなるのかを論じる。

キーは2つ。米中が協力関係になるのか、対立関係になるのか。そして、それ以外の国は、独立した重要な役割を演じられるのか。

まず、米中の未来はそれぞれの内部事情に左右される。次に、互恵関係でいられるかどうかという直接的なやり取りもファクターとなる。北朝鮮やイランでトラブルが起きれば、仲違いとなるかもしれない。

縦軸を米中の関係、横軸を各国の強さと見たとき、デフォルメ化した未来は以下のようになる。

| | その他の国々は弱い | その他の国々は強い | |----|----|----| | 米中は協力的 | G2 | 協調 | | 米中は対立的 | 冷静2.0 | 地域分裂世界 | この内の2つの組み合わせになる公算が高い。

G2が実現するための条件。

まず、中国が政治的に先進国的になること。経済的に輸出依存を薄めること。軍事的に謙虚になること。これらのメリットを中国が理解する必要がある。

そして、アメリカ経済が復活し、アメリカ国内に世界の公共財への投資者として、納得感が生まれること。

あるいは、資源問題、サイバー攻撃、核保有国の危機など、米中の利害が一致する問題が起こっても良い。

しかしまず、中国自身がそれを望んでいない。かつ、G2実現の条件である両国が同じく経済発展する、というのが難しい。また、両国の政治経済のシステムが違いすぎる。

相手国を貶めるような政治パフォーマンスもなくならない。

中国が共通点や協力意欲を見しだすとしたらアメリカよりもドイツ。

そして、G2が実現するほどその他の国が弱くない。

協調(機能するG20

各国が協調するには、影響の大きい問題が必要。しかし、問題による影響と問題からの回復時間は国によって異なる。 ので、G2以上に可能性の低いシナリオ。

冷戦2.0

米中の間には経済的相互依存関係があることを忘れてはいけない。

さらに中国は国内に優先課題があり、かつてのソ連のように軍事的プレゼンスを出すのは非常に高価だし、イデオロギー的にも文化的にもソ連のようにアピールするものがない。

アメリカ側にも、かつてのブレトンウッズ体制を築くような追い風はない。ソ連のような共産主義の恐怖感もなければ、戦後の連帯もない。

冷戦2.0は、G2や協調よりも実現性は高いものの、米中が直接衝突するリスクは制限されている。

地域分裂社会

これがGゼロ後のシナリオとして最も可能性が高い。

ドイツとサウジアラビアは、それぞれヨーロッパと中東ですでに地域リーダーの役割を果たし始めている。ブラジルは南米のモデル国家となれるかもしれない。アフリカ全体の協調は難しくとも、ケニア南アフリカ、ナイジェリアがそれぞれの局所的なリードをするかもしれないが、その役割は限定的と見られる。ロシアが周辺国に影響力を持てるかどうかは、ロシア経済次第。アジアは世界で最も不安定な地域となる。

非常に可能性の低いシナリオとしては、国家自体の危機。内部的な問題により、地方政府や国民が統制不可能になる可能性もないではない。

第6章

Gゼロ後のアメリカについて。

アメリカの優位性が損なわれたわけではない。ハードパワー、つまり軍事予算は未だに莫大。

そして英語は公用語であり続ける。起業家精神も貴重な強み。かつてのソ連のようにアメリカに挑戦的なイデオロギーを提示できる国はない。

しかしアメリカにも改善点がある。まず、教義的な押し付けをやめ、他国や地方のやり方を尊重すること。すべての国が民主化自由経済化の準備が出来ているわけではない。それから、赤字が問題だと認め、予算の範疇を意識すること。また、自国民がアメリカの中核的な力を信じること。

星評価

★★★★★

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