レビュー
ツイッターで読書家の方にオススメされて読んでみた。
第153回芥川賞を受賞した作品とのことで。いざ読んでみると、芥川賞にしては癖が少なくてサラリと読める。
構造はシンプル。休職中の28歳の男性<健斗>が主人公となる。彼には同居している母親と祖父がいる。この祖父と主人公の関わりが物語の主軸となる。
介護を必要としている祖父は、善人でも悪人でも無い。とてもリアルな老人として描かれているように思う。
祖父は何度も「自分なんて早く死んだらいい」と言う。本心でそう思っているというより、口癖のように繰り返す。
そんな祖父を見て、健斗は「尊厳死アシスト」を思いつく。徹底的に介護をしてやり、能力を奪い、死を早く実現させようという計画である。
そのプロットだけを見ると末恐ろしいのだけど、物語のテイストはどこか可笑しい。読み味はライトで、読後感も悪くない。青年としての健斗の心理の揺れ動きが、瑞々しさを感じさせたためかもしれない。
それから、祖父が過去を改変して覚えている点は沁みた。何度もそう思い込む内に、それが真実であるかのように記憶されることはあるらしい。「天の光はすべて星」を思い出す。
とは言え、傑作すぎることもなく、駄作というわけでも決してない。ちょうど星3つくらいの印象。
以下、引用。
裸の老人と皮膚で触れ合っている感覚に不慣れで距離感がつかめず、自分自身の精神も丸裸にされているようで異様に疲れるのだ。 p.140
自分より弱い肉体がそばにいない p.148
星評価
★★★☆☆