レビュー
総括
リモートワークについて調べていたところ、本書の存在を知った。リモートワークに限らず、チームで働くということ、チームメイトとの関わり方について書かれているようだと分かり、興味を持って購入。
6章からなる本書。構成は分かりやすく、展開も自然。個人の話から始まり、組織への話が展開される。その後、外部のユーザについて言及し、完結となる。非常に読みやすく、自分に当てはめて考えやすい。
想定している読者はソフトウェアエンジニアとのこと。技術的なことではなく、ソフトウェアエンジニアとしての在り方について学びたい人にはオススメの一冊。
自分自身、これまでのキャリアを振り返った時、本書で書かれていることを実践できていたらもっと上手く立ち回れていたかもしれない、と思わされた。
とは言え、新参エンジニアがいきなり読むべきかと言われたらちょっと早すぎるかもしれない。幾ばくか経験を積んだエンジニアがさらなるレベルアップを実現するための書籍と言った印象。
挿絵が多いので、見た目以上に分量は少ない。かつ、ウィットに富んだジョークや海外特有の言い回しを学べるという点でもユニークな一冊。
以下、各章より抜粋。
ミッションステートメント
本書の目的は、プログラマがソフトウェア開発を効果的かつ効率的にするために、他人の理解・コミュニケーション・コラボレーションの能力を向上させることである。
はじめに
対象読者はソフトウェア開発者
1章 天才プログラマの神話
ソフトウェア開発はチームスポーツ。誰かと一緒に仕事をしなければいけない。一人で仕事をするほうがリスクが高い。
以下、三本柱(健全な対話とコラボレーションの基盤となる
・謙虚 ・尊敬 ・信頼
これらを合わせてHRT(ハート)と呼ぶ。
人間関係は何かを成し遂げるための関係を構築するということ。人間関係は確実にプロジェクトよりも長生きする。
プロのソフトウェアエンジニアリングの世界では、批判は個人的なものではなく、優れたプロダクトを作るためのプロセスの一部にすぎない。したがって、成果に対する建設的な批判と、性格に対する攻撃的な非難との違いを理解しておく必要がある。(p.20
君は君の書いたコードではない(自分の価値を自分の書いたコードと結びつけてはいけない
過ちから学ぶには、失敗を文書化することだ。学習した結果として、何を学んだかと何を変更したかを記述する。
問題なのは、チームの中で局所最適化してしまうと、学ぶのをやめてしまうことだ。(p.24
2章 素晴らしいチーム文化をつくる
創業者やリーダーは文化を作らない、文化が健全かどうかに気を配る。チーム文化の定義・維持・防御に責任を持つのはチームメンバー。
強い文化は改善に対してオープン、害を与える急激な変化に対しては防御的。優れたチームの文化は、ソフトウェアを届けることに集中している。
強固な文化を構築すると「自己選択的」になる。つまりその文化に合致した人間が集まる。
優秀なエンジニアは他の優秀なエンジニアと働きたいと思っている
コミュニケーションの原則は、同期コミュニケーションの人数を減らし、非同期コミュニケーションの人数を増やすこと
ミッションステートメントには、目指さないことも含めるべき。ミッションステートメントはプロダクトのピボットに合わせて変更してもよい。
「ミーティングを開くときの5つの簡単なルール(p.47 )」は後でまた見返したい
すべてはコードに通ず。
ミーティング・ メーリングリスト・オンラインチャット・コードコメント・ドキュメンテーション・意思決定プロセスは、すべてがチーム内外のコミュニケーション
コードを書くことを目的とする強いチームを作るには、膨大なコミュニケーションが必要となる。コードはマシンとのやり取りではなく、人と人とのコミュニケーション。
3章 船にはキャプテンが必要
リーダーとマネージャーの違いについて言及。サーバントリーダーに関する説明があり。リーダーにならない人にも有効な章 リーダーへの理解が深まる
リーダーのアンチパターンが紹介される。以下に列挙。
・自分の言いなりになる人を採用する ・パフォーマンスの低い人を無視する ・人間の問題を無視する ・みんなの友だちになる ・採用を妥協する ・チームを子どもとして扱う
リーダーシップパターン(グッドパターン)。以下に列挙。
・エゴをなくす(謙虚は自信がないこととは違う ・禅マスターになる ・触媒になる ・メンターになる
エンジニアには適度な方向性とモチベーションの両方が必要
4章 有害な人に対処する
排除すべきは人ではなく有害な「振る舞い」である点に留意。
本章では、有害な振る舞いへの対応策が紹介される。
「天才(優秀なプログラマ)は置き換え可能。それよりもHRTに基づいた文化を守ることが大切」
5章 組織的操作の技法
いわゆる社内政治的なお話。社内でどう立ち回るべきか、どのように組織と向き合うべきかについての解説。
6章 ユーザも人間
ユーザに注目すれば、他のことはすべてはついてくる。(Googleの有名なモットー)