日々是書評

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【1日に300回のドーパミン注射】スマホ脳 - アンデシュ・ハンセン

レビュー

面白かった。自分自身、スマホに費やす時間が年々と増えてきた自覚があり、そこに歯止めをかけてくれる1冊だった。

スマホそしてSNSがどのように悪影響をもたらすのか、なぜ依存性を持つのか。そのメカニズムが解説される。

人間はもともと注意散漫。そこに付け入り、「1日に300回のドーパミン注射」を行うのがスマホであり、SNS

内容は筆者の主観も含むものの、充分な説得力をもつ。いわゆるデジタルデトックスを試みて、現代の貴重なリソースである集中力を守っていきたい。巻末に筆者からの具体的なアドバイスがある。さっそく実践していきたい。

引用

1章 人類はスマホなしで歴史を作ってきた

社会の発展に、人体の進化が追いついてないという話。飢餓時代には、とにかく食べることは大事だった。しかしその欲求は、飽食時代となった現代において害をなす。

正の感情よりも負の感情の方が強い

2章 ストレス、恐怖、うつには役割がある

強いストレスを感じると、「闘争か逃走か」状態になる。深く考えられない。

扁桃体がストレスアラームの役割。火災報知器の原則のように、鳴りすぎるくらいがちょうどいい、の働きをする。現代社会には合っていない。

もちろん適度なストレスは大事。

ストレスは起こったことへの反応。不安は起こりうることへの反応。不安のおかげで人間は、危機に備えることができる。

スウェーデンでは大人の9人に1人が抗うつ薬を飲んでいる。

いわゆる燃え尽き症候群のように、長期間のストレスにさらされた後にうつ傾向が出ることがある。

うつと免疫系には遺伝的な繋がりがある。人間を危険な状況から逃げさせる役割。また、ストレスは警告サインでもある。

3章 スマホは私たちの最新のドラッグである

ドーパミンは人間の集中をなにかに向けさせる。行動する機会を与える。

脳は新しいものが大好き。報酬探索行動と情報探索行動。

ドーパミンが最も放出されるのは、期待に対して。お金じゃなくて、お金がもらえるかも、に対して。しかも、確実にもらえるよりも、2回に1回しかもらえない方が放出される。

いいねが押される瞬間よりも、いいねを期待するときの方がドーパミンが出る。ポーカーのもうひと勝負と一緒。

ジョブズは自身の子どものデバイス使用を制限した。テクノロジー開発だけではなく、その影響についても先見の明があった。

4章 集中力こそ現代社会の貴重品

マルチタスク派のほうが集中が苦手。しかも、切り替えには時間がかかる。しかし、脳は気が散っている方を好む。

マルチタスク派のほうが作業記憶も弱い。つまり、常に気が散る人は脳が最適な状態で動かなくなる。

スマホはそこにあるだけで集中力を奪う。スマホの有無によるテスト実験より。

スマホを見ないようにする、というのも能動的な行為なのでエネルギーを使う。

長期記憶を作るには、集中する。そして脳にこれが大事だと教える。その結果、「固定化」する。

スマホで次から次に情報を閲覧するのは、実は頭に入らない。

グーグル効果、デジタル健忘症。

スマホとは、1日に300回もドーパミン注射をしてくるもの。

5章 スクリーンがメンタルヘルスや睡眠に与える影響

ブルーライトメラトニンの分泌を抑制してしまい、睡眠に悪影響。しかしこの効果は人依存。すぐ眠れる人もいる。 さらに、グレリンという空腹ホルモンも分泌される。

画面を暗くして、36センチ以上離して見れば、悪影響は弱まる。

筆者の考えでは、スマホの最大の悪影響は、時間を奪うこと。運動や人付き合いといった、メンタルヘルスにプラスの活動をする時間がなくなる。

6章 SNS―現代最強の「インフルエンサー

脳は噂話が大好き。特に、悪い噂が。ゴシップとも言える。人間が本質的に社交的であることと関連してる。

自分のことを話すとき、内側前頭前皮質、さらに報酬中枢である側坐核が活発になっている。つまり、自分語りが好き。この傾向が強い人ほど、フェイスブックの利用時間が長い。

SNSに触れる時間が増えるほど、孤独感は強まる。

猿のセロトニンに関する実験。ボス猿はセロトニンの量が2倍。社会的な地位が幸福に寄与する。しかし、他の猿のセロトニンを増やすことで、ボスらしい指揮を採り始める。そして、ボス猿をマジックミラーで囲み、他の猿には見えないようにする。つまり、他の猿はボス猿の言うことを聞かない。するとボス猿はうつ傾向になってしまう。影響力を持っていることが大事。

うつには2パターンある。仕事や人間関係からくるもの。そして、社会的な地位を喪失したことによるもの。

SNSは劣後感を抱かせる。

画像を投稿する、他のユーザーと交流するといった、SNSの積極的な使い方は悪影響が少ない。しかし、フェイスブックのうちアクティブな利用は9%のみ。ほとんどはただタイムラインを消費している。

ミラーニューロンは生来的で、体性感覚野を刺激する。つまり想像する。これは目の前で何かが起こると活発化する。演劇でも多少の活発化が見られ、映画はそれほどでもない。

調査によると、現在の大学生は80年代に比べると、共感的配慮と対人関係における感受性の能力が衰えている。

SNS企業にとって最大の財産は人々の注目。それを集めて、マーケティング企業に売る。

フェイクニュースについて。どんなニュースが広まるかはアルゴリズムが決めるが、そこに真偽は関係なかった。人々が拡散するから拡散する。フェイクニュースは正しニュースよりも6倍のスピードで広まる。

7章 バカになっていく子どもたち

前頭葉は衝動にストップをかけ、報酬を先延ばしにできる。が、子どもではこの機能が未発達。

大人でさえも、報酬への抑制が効かなくなってきている。(例:楽器のように、習得に時間のかかるものを続けられない。

子どもの就寝時間は減少傾向にあり、うつは増加傾向にある。

8章 運動というスマートな対抗策

運動をすると、衝動抑制が高まり、集中力も上がるという調査結果が。それも、数分の運動で。(ただし、実行機能の向上はもっと長い期間での運動を要する)

9章 能はスマホに適応するのか

フリン効果とは、世代ごとにIQが高まる現象。しかし、ここにきて上昇に頭打ち感が出ている。

人間は幸せになるようにできてない。そのような選択圧はなかった。

AIによって仕事が奪われた結果、残るの集中力を要する仕事。しかしデジタル社会は人間の集中力を弱めている。

今回紹介した本