レビュー
面白かった。自分自身、スマホに費やす時間が年々と増えてきた自覚があり、そこに歯止めをかけてくれる1冊だった。
スマホそしてSNSがどのように悪影響をもたらすのか、なぜ依存性を持つのか。そのメカニズムが解説される。
人間はもともと注意散漫。そこに付け入り、「1日に300回のドーパミン注射」を行うのがスマホであり、SNS。
内容は筆者の主観も含むものの、充分な説得力をもつ。いわゆるデジタルデトックスを試みて、現代の貴重なリソースである集中力を守っていきたい。巻末に筆者からの具体的なアドバイスがある。さっそく実践していきたい。
引用
1章 人類はスマホなしで歴史を作ってきた
社会の発展に、人体の進化が追いついてないという話。飢餓時代には、とにかく食べることは大事だった。しかしその欲求は、飽食時代となった現代において害をなす。
正の感情よりも負の感情の方が強い
2章 ストレス、恐怖、うつには役割がある
強いストレスを感じると、「闘争か逃走か」状態になる。深く考えられない。
扁桃体がストレスアラームの役割。火災報知器の原則のように、鳴りすぎるくらいがちょうどいい、の働きをする。現代社会には合っていない。
もちろん適度なストレスは大事。
ストレスは起こったことへの反応。不安は起こりうることへの反応。不安のおかげで人間は、危機に備えることができる。
いわゆる燃え尽き症候群のように、長期間のストレスにさらされた後にうつ傾向が出ることがある。
うつと免疫系には遺伝的な繋がりがある。人間を危険な状況から逃げさせる役割。また、ストレスは警告サインでもある。
3章 スマホは私たちの最新のドラッグである
ドーパミンは人間の集中をなにかに向けさせる。行動する機会を与える。
脳は新しいものが大好き。報酬探索行動と情報探索行動。
ドーパミンが最も放出されるのは、期待に対して。お金じゃなくて、お金がもらえるかも、に対して。しかも、確実にもらえるよりも、2回に1回しかもらえない方が放出される。
いいねが押される瞬間よりも、いいねを期待するときの方がドーパミンが出る。ポーカーのもうひと勝負と一緒。
ジョブズは自身の子どものデバイス使用を制限した。テクノロジー開発だけではなく、その影響についても先見の明があった。
4章 集中力こそ現代社会の貴重品
マルチタスク派のほうが集中が苦手。しかも、切り替えには時間がかかる。しかし、脳は気が散っている方を好む。
マルチタスク派のほうが作業記憶も弱い。つまり、常に気が散る人は脳が最適な状態で動かなくなる。
スマホはそこにあるだけで集中力を奪う。スマホの有無によるテスト実験より。
スマホを見ないようにする、というのも能動的な行為なのでエネルギーを使う。
長期記憶を作るには、集中する。そして脳にこれが大事だと教える。その結果、「固定化」する。
スマホで次から次に情報を閲覧するのは、実は頭に入らない。
グーグル効果、デジタル健忘症。
5章 スクリーンがメンタルヘルスや睡眠に与える影響
ブルーライトはメラトニンの分泌を抑制してしまい、睡眠に悪影響。しかしこの効果は人依存。すぐ眠れる人もいる。 さらに、グレリンという空腹ホルモンも分泌される。
画面を暗くして、36センチ以上離して見れば、悪影響は弱まる。
筆者の考えでは、スマホの最大の悪影響は、時間を奪うこと。運動や人付き合いといった、メンタルヘルスにプラスの活動をする時間がなくなる。
6章 SNS―現代最強の「インフルエンサー」
脳は噂話が大好き。特に、悪い噂が。ゴシップとも言える。人間が本質的に社交的であることと関連してる。
自分のことを話すとき、内側前頭前皮質、さらに報酬中枢である側坐核が活発になっている。つまり、自分語りが好き。この傾向が強い人ほど、フェイスブックの利用時間が長い。
SNSに触れる時間が増えるほど、孤独感は強まる。
猿のセロトニンに関する実験。ボス猿はセロトニンの量が2倍。社会的な地位が幸福に寄与する。しかし、他の猿のセロトニンを増やすことで、ボスらしい指揮を採り始める。そして、ボス猿をマジックミラーで囲み、他の猿には見えないようにする。つまり、他の猿はボス猿の言うことを聞かない。するとボス猿はうつ傾向になってしまう。影響力を持っていることが大事。
うつには2パターンある。仕事や人間関係からくるもの。そして、社会的な地位を喪失したことによるもの。
SNSは劣後感を抱かせる。
画像を投稿する、他のユーザーと交流するといった、SNSの積極的な使い方は悪影響が少ない。しかし、フェイスブックのうちアクティブな利用は9%のみ。ほとんどはただタイムラインを消費している。
ミラーニューロンは生来的で、体性感覚野を刺激する。つまり想像する。これは目の前で何かが起こると活発化する。演劇でも多少の活発化が見られ、映画はそれほどでもない。
調査によると、現在の大学生は80年代に比べると、共感的配慮と対人関係における感受性の能力が衰えている。
SNS企業にとって最大の財産は人々の注目。それを集めて、マーケティング企業に売る。
フェイクニュースについて。どんなニュースが広まるかはアルゴリズムが決めるが、そこに真偽は関係なかった。人々が拡散するから拡散する。フェイクニュースは正しニュースよりも6倍のスピードで広まる。
7章 バカになっていく子どもたち
前頭葉は衝動にストップをかけ、報酬を先延ばしにできる。が、子どもではこの機能が未発達。
大人でさえも、報酬への抑制が効かなくなってきている。(例:楽器のように、習得に時間のかかるものを続けられない。
子どもの就寝時間は減少傾向にあり、うつは増加傾向にある。
8章 運動というスマートな対抗策
運動をすると、衝動抑制が高まり、集中力も上がるという調査結果が。それも、数分の運動で。(ただし、実行機能の向上はもっと長い期間での運動を要する)
9章 能はスマホに適応するのか
フリン効果とは、世代ごとにIQが高まる現象。しかし、ここにきて上昇に頭打ち感が出ている。
人間は幸せになるようにできてない。そのような選択圧はなかった。
AIによって仕事が奪われた結果、残るの集中力を要する仕事。しかしデジタル社会は人間の集中力を弱めている。