日々是書評

書評初心者ですが、宜しくお願いします ^^

【規格外のシリアルアントレプレナー】イーロン・マスク 未来を創る男 - アシュリー・バンス

総評

おそらく多くの日本人がそうであるように、自分もまた、イーロン・マスクを若手起業家か何かかと思っていた。

最近やたらと耳にする人物。民間で宇宙ロケットを飛ばしている人物。電気自動車を作っている人物。

その程度の知識しかなかった。

しかし本書は読めば、彼がどれほど規格外の人間かが分かる。

例えば、スティーブ・ジョブズApple のプロダクトについて誰よりも真摯だった。しかしイーロン・マスクは更に大局的なものを見る。

彼は人類全体を見ている。人類の火星移住の実現に、真摯に向き合う。

その時点で、スティーブ・ジョブズとは比較にできない人物だという事がわかる。(そもそもイーロン・マスクシリコンバレーのみならず、ロサンゼルスにも拠点を置いている

さらに彼の実績は、20世紀までの遡ることができる。1995年に Zip2 という会社を起業している。その後、(あの)ペイパルにも深く関わっていたのだと分かり、俄然興味が湧く。

その後の、スペースXとテスラの起業ストーリーには、やはり胸が熱くなってしまう。

今をときめくテスラという会社もこんな窮地があったのかと。その窮地をスペースXからの融資で乗り気る、というのもすごい話w(ちなみに、この書評を書いている今、ちょうどテスラの時価総額トヨタのそれを上回った

ラリー・ペイジやピーター・ティールなど、あの世界の大物がさらっと登場するのも熱い展開。いかにイーロン・マスクが業界から期待されているかが分かる。

読み物としても面白く、さらに今後も世界を賑わせていくであろうイーロン・マスクについて知ることができたという意味で、大変意義深い読書体験だったと思う。

惜しむらくは、この自叙伝に出会うのが遅くなったこと。もっと早く読んで、早くテスラの株を買っておけば…と思わずにはいられないw

メモ書き

以下、読みながら書いた各章のメモ書き。

第一章

イーロンマスクは大学卒業後起業をした。その事業を売却した資金で、ペイパルを創業。さらにその資金がテスラとスペースXの燃料となる。

特許出願数は減少傾向にあり、イノベーションは限りある資源となっている。

テスラの壁は保守的な軍需産業や国。アップルのそれが音楽産業出会ったのに比べて、とてもチャレンジング。

テスラの電気自動車は、旧来の自動車と異なり保守費で稼げない(オイル交換など)。さらに、ディーラーも存在せず、ネット販売。

30歳の誕生日に英国の古城を貸し切ってかくれんぼをしたというエピソードが可笑しい。さらにコスプレパーティーが好きだったり、力士を呼んで相撲をしたり、プライベートを思いっきり楽しんでることがよく分かった。

第二章

イーロンマスクは南アフリカ生まれ。

子どもの頃にゲームプログラミングを始め、ソースコードが雑誌に掲載された。

イーロンマスクの祖父のジョシュア・ハルデマンはとても破天荒な人物で、マスクは彼の影響を強く受けていると思われる。

母親のメイは60歳までファッションモデルを続けたような人で、ビヨンセのMVにも出演したとか。かっこよすぎる。

一方で父親のエロルは非常に厳格、というか人間性に問題があった。父親のもとでマスクら兄弟は惨めな子ども時代を過ごした。

マスクの初めての起業体験は未遂に終わる。ゲームセンターの開業を目指して、立地を選定してリースを行うところまではいったものの、成人の参加が必要で頓挫した。

法改正によりカナダ国籍が取れるようになるや否や、マスクはカナダに飛び立ち、南アフリカに別れを告げた。

南アフリカにい続ければ、徴兵制に則りアパルトヘイトに加担することになる。

第三章

学生時代には経済学と物理学の学位を取得した。さらに、インターネット、宇宙、再生可能エネルギーの3分野に未来があり、そして自分が活躍できる分野だと確信した。

第四章

初めての起業は、Zip2というインターネット事業会社。イーロンマスクは弟のキンバルと二人三脚で会社を盛り上げていった。またこの頃、クーリという30台半ばの男性と出会い、彼がイーロンマスクのメンターのような存在となる。

外部役員の受け入れ、ベンチャーキャピタルからの投資獲得、競合他社との合併、そして他企業からの買収。Zip2のストーリーは、ドットコムバブル起業の一例として、それだけで一冊の本ができそう。

初めての起業を通じて、人や会社を引っ張り管理することの難しさと勘所を掴みかけた格好となる。

第五章

マスクが次に手掛けるのはネット金融事業。Zip2を売却した資金を注ぎ込み、X.comを起業した。X.comは1999年にサービスを開始。

コンフィニティというベンチャーがペイパルを運営して競合となったものの、結局は合併となった。マスクはまたもやCEOを外される。それはクーデター的だったが、マスクは状況を鑑みて受け入れた。

結局、ペイパルはeBayに買収されることとなる。しかし、ITバブルの弾けた後の買収としては大成功の部類に入る。しかも、ペイパルの時期を通じて、マスクはメディアからいよいよ注目されることとなった。

さらに、ペイパル出身者はペイパルマフィアなどと呼ばれ、後にシリコンバレーの上層部となっていく。リンクトイン、ユーチューブ、フェイスブックなど。また、ペイパルで開発された技術がFBIで利用されるなど、高い技術力を持っていた。

第六章

宇宙事業の話がスタート。

マスクはロシアに出向き、大陸間弾道ミサイルを購入しようとするものの、交渉は上手く行かず自作の道を歩み始める。

ロケットエンジンの専門家であるミュラーを引き入れ、事業をスタート。

第七章

テスラモーターズについて。テスラというのは自動車好きの二人が興した会社であり、マスクは当初投資家だった。

2007年、テスラは自社製品のお披露目を行い、グーグルの共同設立者のラリー・ペイジらが電気自動車の購入を決定するなど、テスラの存在感が公となった。また、自動車産業にとって、初めてシリコンバレーが驚異となった瞬間でもある。

しかし、生産上の誤算や、CEOだったエバーハードの解任など、問題が現れ始める。

第八章

苦難の時について。

マスクは私生活でジャスティンと離婚に至る。一方で、テスラは現金が底をつきそうだった。

私生活では、イギリスで出会ったライリーという女性と恋に落ちて結婚をする。

テスラに関しては買収の驚異を退け、スペースXからの融資という形で切り抜ける。

第九章

ベゾスとマスクの仲違いについて。

ベゾスはスペースXから開発者を引き抜き、あまつさえその分野で特許を取ろうとした。2倍の給料で釣って競合を潰すその姿勢を、マスクは批判する。

略語は最低、というマスクの全社宛メールは笑えるけど共感。

第十章

筆者はマスクの魅力についてこう述べる。

きわめてビジュアル志向で、明確に覚えていつでも思い出せる。しかも自分の思いをすぐに言葉にする能力も高い。だから、自信と確信を持って意見を言うし、消費者の共感も得やすいのだ。

テスラの充電ステーションに関して、マスクは無料使用を打ち出した。これって本当に革命的なことなんだよなと再実感。

第十一章

マスクの3つ目の事業であるソーラーシティについて言及される。

マスクのジョブズとの比較について。二人をよく知る人物は、マスクの方が人間性が上だが、マーケティングやメディア対応についてはジョブズには劣ると評価。

ラリー・ペイジのマスクへの信頼と期待の高さが紹介される。

星評価

★★★★★

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