記憶や人格などの情報をコンピュータに“ダウンロード”することが可能となった21世紀なかば、ソフトウェア化された意識、“コピー”になった富豪たちは、コンピュータが止まらないかぎり死なない存在として、世界を支配していた。
その“コピー”たちに、たとえ宇宙が終わろうと永遠に存在しつづけられる方法があると提案する男が現われた…
電脳空間の驚異と無限の可能性を描く、キャンベル記念賞、ディトマー賞受賞作。
レビュー
うーん、とても難解だった!w それでも総体として面白かったという印象を残すのだから、やっぱりグレッグ・イーガンはすごい。
オートヴァース内の化学的な描写は、正直なところ難しくて飛ばし読みしてしまった。あと、コピーのポールが真相?に至るまでの考察も。
だけど、そんな初心者をも楽しませてくれるのだから、イーガンはすごい。上級者向けの細部を披露しつつも、初心者を振り落とさない。しっかりとストーリーの道案内をしてくれる。 だから読んでいる方も必死になってしがみつくことができて、タフな読書体験を獲得できる。
話の核となるのは、人間のコピーを作成してコンピュータ上で走らせるというもの。 単なるSF的アイデアの披露に留まらないのは、話が多層的だからだ。コピーという存在について、経済・法律・哲学などの複数の視点から語られる。だから、のめり込んでしまう。
コピー以外にも、ささやかなSF的エッセンスが散りばめられている。手の込んだ迷惑メールとか、新しいライブ鑑賞のスタイルとか。それ単体で短編小説になり得るレベルのギミックが差し込まれる。SF小説として非常に贅沢。
また、上巻としての終わり方がすごくサスペンスドラマ的で下巻が気になってしまう感じ。
星評価
★★★★★