レビュー
楽待相談室でとある回答者の方がおすすめ書籍として提示していたので、気になって買ってみた。
15年くらい前の書籍で少し不安があったものの、読み進める。
思えば、空室対策に特化した本を読むのはこれが初めてだった。
成功率100%!と、強気な書き出しにはたじろいだものの、内容はよかった。
大家業はサービス業、と言い切っているところがよかった。買って終わりじゃない。入居して終わりじゃない。入居者にとって何が良いかを考えること。それが大家業なのだと、気を引き締め直す想い。
自分自身学びがあったし、初心者の方にもおすすめできる1冊だった。
本書の末尾にやるべきことのチェックリストあり。
引用・抜粋
序章 ショック!アパートを買った途端、12世帯が退去
家賃の下落や金利の上昇リスクによって賃貸経営は徐々に圧迫されていく。空室対策をしなければ空室状況も徐々に悪化していく。
なぜ空室が埋まらないのかと言うと、内見者が少ないからか、内見はあるが成約率が低いから。
内定者が少ない理由。不動産業者は手数料の取れそうにない物件、つまり魅力的ではない物件は後回しにしてしまう。あるいは敷金礼金ゼロのような入居者負担が少なくすぐに埋まりそうな物件は優先度が高い。
あるいは単純に物件の入居希望者への露出が少なすぎる場合もある。現代は入居希望者の98%はインターネットで物件を探す。コンビニに置かれた賃貸物件雑誌や駅前の賃貸物件情報なども侮れない。
また意外なポイントとしては物件を探しに来た入居希望者に対して、不動産屋がこんな物件もありますよと紹介するパターンもある。
内見後の成約率に関して。成約する確率は2割程度。不動産業者からは家賃を下げてくださいなどと打診が来るが、家賃を下げるのは内見者が5人やってきて成立しなかった時に初めて考えること。
成約する確率は中古で2割、新築で3割が相場。筆者のメソッドを利用すれば中古で3割、新築で4割を達成できる。
入居希望者に価値を提供できれば家賃を上げることは十分に可能。
満室経営のモチベーションの維持方法として、満室時の自分へのご褒美を考えておく。それは普段手が出ないような、ちょっといいものであると良い。
第1章 内見者を増やせ!究極の入居募集術
まず内見者の数を増やす。家賃設定が妥当かどうか間取りが古いかどうかはその後に考える。
内見者の数を増やすには広告を打つ。その際不動産屋任せの広告作成ではなく自分で目立つ広告を作成する。一般的に情報量は多ければ多い方がよい。不動産業者も暇ではないので、広告作成はオーダーメイドではなく、ソフトを使って似たようなものを量産するような形になる。
以下広告作成の9個のポイント。
チラシ専門業者にカラーで製作依頼をする。3万円ぐらいかかるが集客力が上がる。
建物写真を入れる。写真撮影のポイントは28 mm 以上の広角で撮影できるデジカメを使うこと。そして建物は見きれずに全体を写すこと。
一言デブ系の特徴がわかるキャッチコピーをつけること。見てる人の認知不協和を起こすような、つまり考えさせるようなキャッチコピーだと良い。
ハンデを感じさせない間取り。間取り図を長めにするなど工夫して奥行きを見せたり設備をアピールしてハンデを薄める。
この物件に住むことで得られるメリットを列挙する。
ビジュアルでわかる周辺マップ。単なる周辺施設の網羅ではなく、観光レベルでワクワクするような地図を記載する。
分かりやすく高いと感じさせない料金体系。筆者は家賃を3割高くしている。しかし敷金礼金ゼロにしてインパクトを高めたり、家賃は安くするが共益費を高くしたりしてトータルでの収入を上げたりしている。
家賃値引きコースの設定。顧客が迷ったら購入まであと一歩。本日決めてくれたら家賃を3000円引きなどすると効果抜群。内見者が来たら、その旨を不動産業者に伝えておく。
次に、募集チラシを仕掛けるターゲットについて。
1つの戦術のうち最も重要なのが人海戦術。その物件の属する地域の不動産屋は全て回る。最寄り駅の周辺の不動産業者は全て訪問するし前後さん役また必ず複数路線が集まるターミナル駅は押さえておく。不動産業者が訪問して宅に対して複数の物件を提示するのでそこのリストに割り込ませることが大事。
とその後良さそうな業者2週に1回程度の頻度で訪問し後は週に数回電話で状況を確認しながらフォローしていく。経験則では実際に内見者を紹介してくれる熱心な業者は2割。この2割の業者と関係を強めていく。
80対20の法則。利益を生み出してくれる2割のために自分の8割の力を使う。
内見者が多くなるのは週末なので金曜日に訪問したり電話するのが効果的。また週明けの月曜日に状態を確認するのが良い。
不動産業者は向こうから電話をしてこない。契約が成立した時だけ。熱心に電話をかけてくれるのは2割程度。なのでこちらから積極的に確認の電話をしていく。その際成立しなかったことを絶対に責めてはいけない。
客付けは一般募集と専任媒介のどちらを利用するかメリットとデメリットをよく考えておく。
物件情報をインターネットに掲載するべし。ポータルサイトはもちろんのことを独自の賃貸情報サイトを立ち上げたり地域の情報サイトを立ち上げることも有効。
物件現地にチラシを設置しておくことも大事。清掃の度に補充する。
アナログの賃貸情報を教えの掲載効果も馬鹿にならない。無料よりも有料のものの方が多くの人の目にとまる。また掲載する際は他社が紹介しても良いという星印をつけてもらうと良い。
物件の紹介依頼をした時に業者から提案される間違った意見や古い習慣は無視して良い。
物件の価値を上げるのが空室対策の第一歩。
敷金は原状回復の費用にできない、と国土交通省のルールで決まっている。
修繕やバリューアップのために、家賃の値上げは必要。
修繕ポイントは、退去の都度、ちょこちょこ直すこと。
筆者のおすすめは、新築同然にまで直すこと。ただし、床の張替えはワンルームで6,7万円かかる。上から貼るタイプだと安上がり、と言った工夫が必要。
リフォーム完了前は、入居者に見せてはいけない。リフォーム前に内見する場合、クロスを選ばせてあげる、など。(あなた好みの部屋作戦
色にこだわりを持つ。純白は脳に負荷を与えてしまうので、少しイエローがかったアイボリーなとがオススメ。また、ブルーベースとイエローベースを使い分けて、温度の印象をコントロール可能。
内装リフォームにかけられる費用の限度額は、家賃の6ヶ月分まで
外装リフォームの目安は、家賃二ヶ月分×戸数。
物件が永遠に輝く7つの方法 1、クリンネス&フレンドリー 週に一度は自分で清掃する。すると、物件の改善点が見える。また、内見者に出くわすこともあり、アピール&面談代わりとなる。
2、ゴミ周りの衛生監理 不当なゴミ出しは早期発見、早期対処
3、挨拶
4、除草、4月〜9月は雑草シーズン 躊躇なく除草剤を利用する 顆粒よりも液体が効果高い 効果は2ヶ月継続 また、防草シートもオススメ その上から玉砂利を敷けば見た目もよくなる
5、花を飾る 春夏は乾燥に強いポーチュラカ、秋冬はパンジーがオススメ
清掃管理費用が安くなるシルバー人材の活用について。人材のアタリハズレはある。仕事の内容を細かく指示する必要がある。仕事の完了をチェックしなければならない。ただ、清掃管理のチェックリストを使って掲示板に貼り出しておけば、住人へのアピールにもなる。
第3章 老朽アパートでも家賃アップできる7つの秘策
上記で書いたクリーンネスなどの他にも家賃をアップする秘策はいくつかある。
一つ目が家具家電付きにすること。新社会人には学生や外国人に喜ばれ短期の入居が可能になる。
具体的には電子レンジ、冷蔵庫、テレビ、洗濯機、テレビ、ラック、ミニテーブル、エアコン、カーテン、照明器具をつける。トータルでは10万円ぐらいなので、2年も住んでもらえれば初期投資がペイする。空室が2ヶ月発生するぐらいなら、家具家電を揃えた方が良い。
水道光熱費のコミコミプランも一つの手。ただしもちろんその分は家賃に含めておく。一人暮らしの場合水道光熱費は平均7000円ぐらいなので、1万円ぐらいを上乗せすれば大体黒字になる。
敷金礼金といった初期費用をゼロにすることで集客のアピールになる。こちらも家賃に上乗せしておく。目安としては1人暮らしの平均入居期間が2年であることを考慮する。また原状回復費用としてクリーニング代3万円を契約時にもらっておくと安心。
家賃保証会社を利用する。連帯保証人のいない入居者にとっても嬉しい制度。有名どころはリプラス SBI ギャランティ日本賃貸保証日本セーフティ全保連の5社。
第4章 これで即入居!究極のクロージング術
入居希望者の期待値を下げないことと、実際に見たときの期待値を上回ることが大事。
入居希望者の物件見学には可能な限り立ち会って、魅力を120%伝える
しかし実際には入居立ち会いを毎回行うのは不可能なので、営業担当に魅力を知ってもらう必要がある。
以下、13のクロージングテクニック
エントランスで第1サプライズを与える エントランスはピカピカに チラシが散乱しがちなので、チラシ専用のゴミ箱がおすすめ
鍵は現地に備えておき、内見に即対応 錠前ロックのような仕組みを利用し、暗証番号がわかれば内見可能にしておく
空気を常時循環させて、封水切れに注意する ブレーカーをONにして換気扇を常時回す 内見のたびに営業担当に水を流してもらうか、数日ごとに自分で水を流しに行く、あるいはラップをしてしまうという手も
トイレ・玄関に清掃済み表示でクリーンさをアピール
トイレと居室に芳香剤で爽やかな香り付けを
スリッパは必ず常備させる ただし、業者には内見後にスリッパを揃えておくように伝えておく 揃えてくれないならスリッパ置きなどを用意
欠点が長所に変わるリフレームポップ作成法 あまり売り込みをし過ぎると、客がうっとうしく思って成約率が下がってしまう。 営業担当からの説明は必要最低限に留めておき、客に聞かれたことに答えるように終始すると良い。
アメで滞在時間を引き延ばせ
ウェルカムバスケットでささやかな心配りをアピール
観光マップ式チラシで周辺環境をアピール
巻き尺、図面、筆記用具を備えておく
入居のしおりを作成して、お客の疑問に即答する
オーナーからの手紙で背中を押す
第5章 いったん入居したお客を逃さない「アリ地獄経営」のススメ
多くの大家にとって退去は怖いが、満室になると何もしなくなる。
大家業はサービス業。ホテルのようにサービスを尽くして、入居者に気に入ってもらう。
筆者は近所の銭湯をPRし、さらに引っ越し疲れを労うために、銭湯の回数券を購入しておき、プレゼントした。
クレームは最初からクレームなのではなく、最初は要望。早期対応する。
滞納入居者は事前に察知して弾く。直接対面してフィーリングを探る。滞納常習者でないか見抜く。
定期借家契約はリスクヘッジになる。契約期間を364日以内にすれば、大家からの事前告知をしなくてよい。外国人などリスクのある入居者には有効。契約期間を3ヶ月、6ヶ月…と伸ばしていく信用積立方式がよい。
滞納の督促はスケジュールに沿って機械的に。
督促スケジュール
翌日:うっかり忘れもあるので、あくまでソフトに
三日目:速やかにお振込みください、と滞納を意識させる。これでも滞納が続くのなら確信犯の可能性が高い
7日目:ここまでに連絡がつけば、90%の確率で家賃は回収できる
十日目:連帯保証人に連絡し、味方になってもらい、入居者に活を入れてもらう。連帯保証人から連絡が入れば、高確率で家賃回収が可能
14日目:貼り紙
普段はサービスが良いが、滞納するとうるさい大家と認識されることが大事
滞納翌月に2ヶ月分払ってもらうのではなく、翌月以降に一万円ずつ上乗せし、数ヶ月で滞納分を回収する、と言った提案もあり。