日々是書評

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【社会問題のカタログ】#日本ヤバい - 玉木雄一郎

レビュー

2021年衆議院選挙にて議席を伸ばした国民民主党。自分はこの党について、そして代表の玉木雄一郎さんについて何も知らなかったので、勉強のために手に取った。

内容は中々ためになった。32のトピックについて、その問題と対策が書かれる。トピックの具体例は、皇室、高齢化、北方領土、税制など。筆者のスタンスはラフには理解できた。

カタログライクなので、政治問題や社会問題に疎い読者にとって、とっつきやすい入門書になるのではないかと思った。ただし、内容は薄く広くと言った感じなので、その先の深堀りはまた別の書籍に頼って欲しい。

引用・抜粋

1. 本当にヤバい6つの論点

  1. 第三子に1000万円給付 コドモノミクスの明るい未来

5年ごとの調査によると、出産を控える理由の第一位が金銭的な理由で50%を超えている。この状況は30年続いており、少子化対策が適切に取られていないことがわかる。適切な対応をしたフランスでは出生率が改善。

コドモノミクスでは、第一子対策として不妊治療の保険適用と結婚支援を掲げる。そして第三子への1000万円給付。1000万円は月額にして4.5万円。現在の1.5万円の給付額から数万円増える程度なので、そこまで非現実な政策ではない。

子ども対策は、公共事業よりも乗数効果が高い。

地方ほど子どもが増えるので、子ども対策は地方への配分効果を持つ。

明石市は子ども対策を手厚くした結果、人口増・税収増となった成功モデル。

2. 無理な年金制度よりも、ベーシックインカムが老後を救う

年金の所得代替率は現在4割程度。平均寿命が1年伸びるごとに、ポイント下がる。

議員年金は無くなっており、老後資金を不安に感じる若手議員は多くいる。

対策として、老後のベーシックインカムを提唱。国庫負担7万円を支給する。財源は消費税で、4%あげれば賄える。理解を得るためには、国は説明責任を果たす必要がある。

  1. すでに高齢者の5人に1人が貧困

相対的貧困率は、安倍政権で上昇。生活保護受給者の半数以上が高齢者。年金は賃金と物価に連動しており、賃金が上がっていないので年金も上がらない。

4.景気が良くなっても生活が楽にならないのはなぜか

安倍政権で法人が潤ったが、その果実は自社株買いや海外投資など、労働者まで回らなかった。消費を伸ばすために、家計にお金が回る必要がある。

対策としては、賃上げをした企業の法人減税、つまり賃上げ減税。

  1. お金持ちばかりが得をする税制

年収1億を超えると、所得税の負担率は下がっていく。金融所得が分離課税なのは、富裕層に有利。

対策は、金融所得課税を強化。消費税の軽減税率もするべきではなく、給付で対応するのがよい。税制の基本は、公平・中立・簡素。

  1. 愛子天皇を可能に、皇室典範の改正を急げ

現在の皇室典範では、女系天皇は実現不可能。つまり、愛子さまが一般男性と結婚して子どもを持ったとしても、その子どもが天皇になる事はできない。一方、女性天皇自体は、歴史上存在した。

筆者は外務省勤務経験者。

世界には国を持てない民族や、国を維持できなかった地域もある。天皇とは、日本国家の継続性の象徴。

2. 暮らしがヤバい

  1. 遺伝子組み換え、ホルモン剤、食の安全は守られているのか

アメリカでは、遺伝子組み換えのサケ、通称フランケンフィッシュが流通している。多くの反対に合い、販売を拒否するスーパーマーケットも。

日本では、食の安全のために、遺伝子組み換えの表示をしているが、アメリカはこれを批判。貿易の障壁として批判。しかし、輸入はしているのでダブルスタンダードになっている。

また、アメリカでは牛肉などに成長剤が使われており、少ない餌でよく育つ。これはEUや中国、ロシアでは禁止されている。

  1. 「介護離職ゼロ」を本当に実現するには

想定される介護人材への需要に対して、供給が追いついてない。

対策は賃上げ。特に、離職者の60%が3年以内の離職なので、そこのケアを厚くする。

  1. 原発ゼロ社会」は本当に実現するのか

原子力の平和利用から始まり、オイルショックによる石油依存の脆さ、地球温暖化による化石燃料の負の面など、原発は時代時代の要請に応えてきた。

原発ゼロへの道は厳しく、廃炉に伴う技術的な問題や、営利企業がどこまで停止した原発を面倒見られるかなど、課題が多い。現実的な策が求められる。

  1. 「高齢者の足」が奪われている 自動運転が地方を救う

運転免許保有者に占める後期高齢者の割合は、この10年で2倍に増えた。高齢者による事故も絶えない。

対策は、自動運転。AIやスマホを利用した、運転・目的地予約など。

3. 社会がヤバい

  1. 池江瑠花子選手に再び笑顔を、骨髄移植を簡単に受けられる社会に

骨髄移植に関する適合率は50%を超えている。また、骨髄バンクの登録者は50万人以上。しかし実際には、連絡がつかなかったり、都合がつかない。手術に向けて、何度も通院したり必要がある。

国民民主党が提言するのは、ドナー休暇制度。また、電話だけではなくスマホSNSなどを利用したコンタクト手段。

  1. 三世代同居で出生率がアップするのか?

安倍政権の三世代同居の補助金は250万円。しかし、条件はトイレ・玄関・キッチン・浴室のどれかが2つ以上あること。実際に同居しているかどうかは見ていないので、豪邸を持つ富裕層でも補助金を受け取れてしまう。

民主党の方針は、子育てを社会で、だった。三世代同居は、いかにも自民党らしい、家族(というか女性)に育児と介護を押し付ける政策。

  1. WHOが認定、ゲーム依存は病気なのだ

WHOが認定したので、アルコール依存のように国が支援していくべき。

例えば、子どもにスマホを与えるときは、厳密な契約書を交わす、など。

  1. 児童虐待は30年で120倍以上!児童相談所が足りない

対策は、相談員の増員、情報共有の促進、相談員の待遇改善。これは野党5党による議員立法に盛り込まれていた。

4. 仕事がヤバい

  1. 働き方改革は現場の声を聞け

日本の労働時間は必ずしも長くない。祝日が多く、イタリアやアメリカの2倍ほど。しかし、労働生産性が低い。

対策は、収益構造を転換すること。

  1. 経済大国復活へ、突破口は「働き方改革」よりも「副業の解禁」

労働生産性を上げるために、分母である労働時間を減らそうという議論が為されてきた。しかし、分子であるアウトプットや成果を上げることが大事。

  1. 日本にはハラスメントを禁止する法律がない

ILO によると、80カ国のうち60カ国にハラスメントを禁ずる法律がある。

野党の提案は、ハラスメント防止。自社の社員だけではなく、就活生やフリーランスも対象にする。こういったパワハラ規制法案は、自公の反対多数で否決された。

国民民主党では、ハラスメント講習を実施。

5. 教育がヤバい

  1. 日本には理工系人材が少なすぎる

韓国やドイツでは理工系学部の占める割合は6割。アメリカでさえ3割。日本は20%台。もちろん、卒業生の数も少なくなってくる。そのような状況なので、企業の経営者は法学部・経営学部出身が多い。さらに、年金・福祉の支出が激増した一方で、教育への公的支出学は横ばい。科学技術立国を目指すなら、子どもへの投資は不可欠。

6. 経済大国がヤバい

  1. 密約はあるのか?TPPよりもヤバいTAG

  2. アベノミクスで得をしたのは、外国人株主と政府だけ

企業の利益は上がっているが、家計まで回ってきてないというやつ

  1. 東京オリンピック いくらかかるか誰も知らない

7000億円の試算だった東京オリンピックは、最終的には3兆円までに膨れ上がった。

オリンピック関連にかこつけて、なんにでも予算がつけられるようになった。これらを総合的に管理する部門がない。

同じことが2012年のロンドンオリンピックでも起こった。

7. 戦争がヤバい

  1. 沖縄問題は地位協定の見直しこそ、独立国家の責務

米軍基地や地位協定の話。

北方領土の問題について、沖縄の基地問題を解決できない現状があるので、どうせ日本はアメリカの言いなりになると思われる。

  1. 硫黄島「米軍勝利の碑」の撤去を願う

2万人以上の戦死者を出した硫黄島の戦い。遺骨はまだ1万人分しか回収されず、独立国家である基本の領土なのに米軍の勝利碑が建っている。

遺骨の回収を行い、勝利碑の移設か撤去を進めていく必要がある。

  1. 安倍改憲は「百害あって一利なし」

安倍改憲はむしろ自衛隊の存在を不安定にする可能性がある。しかも、国民投票で否決されても、などととんでもないことを言っている。

自衛隊に報いるなら、防衛出動の手当を出すなどの待遇改善など、やるべきことは他にもある。

8. この国の形がヤバい

  1. 麻生大臣「報告書受け取り拒否」でこの国のかたちが壊れた

  2. 「移民政策はとらない」という建前はやめよう

日本で働く外国人の数は連続増加しており、146万人を超えた。 しかし、安倍政権では移民政策は取らないとしている。

労働力としての外国人は欲しいが、生活者のしては望んでいないという政府スタンス。

契約書がなく、口頭での伝達が多い。給与や労働時間など。そのような状況なので、年間7000人もの失踪者が出ている。

  1. 国民の財産「公文書」を改ざんから守れ

アメリカではキャップストーン・アプローチというものがあり、電子メールも公文書扱いされ、自動保存される。

ヒラリー・クリントンが私用メールで仕事をし、問題になったほど。

  1. 党を選ぶか人を選ぶか 小選挙区制の課題

中選挙区制の頃は、同じ選挙区に自民党議員が何人かいる、みたいなことがあった。自分をよく理解してもらうために努力していた。しかし、小選挙区制になり、そういう努力なく通ってしまう議員が生まれた。いわゆるチルドレン。

さらに、ネットに閉じこもって過激言論を繰り返す戦略を取る政治家も。先鋭化して問題発言に繋がっていくケースも。

政治家の質は国民の質の反映でもある。ネット社会も、倫理が成熟していくことが期待される。

  1. このままでは悠仁さま即位のときに皇族がいなくなる

  2. 大坂なおみ選手に続け!国籍を超えたカラフルジャパンへ

渡来人のように、日本は昔から多様性があった。

日本語教育、伝統文化、天皇制がしっかりしていれば、国が揺らぐことはない。

9. お隣さんがヤバい

  1. 北方領土変換交渉は1度白紙に戻した方がいい

日ソ共同宣言では、2島は日本に返還することになっていた。しかし、いわゆるダレス恐喝により、4島返還をアメリカは求めた。さもなくば、沖縄の軍事統括が続く。北方領土問題は米ソの問題でもあった。

安倍政権では、譲歩として共同宣言から2島返還の文言を削除してしまった。

ロシア内では、全島ロシアの領土だとか、日本が北方領土と名乗ることは許されないなど、厳しい声が上がってきている。

  1. 最悪の日韓関係 こればかりは韓国に自省を求めたい

解決済みの徴用工問題を蒸し返したのは韓国側。さらに天皇に謝罪を求めるなど、日本国民感情を逆なでするようなことも。

日韓関係が悪化して得するのは、北朝鮮中国。好き嫌いの問題を超えて、静かに関係改善をしていく必要がある。